事務所ブログ

2013.02.09更新

今回のお話は、信託といっても家族信託ではなく、
信託されているオフィスビルなど大型の物件を
売買する場合のお話で、専門家向けの内容です。


1 信託財産である不動産の売買の形態


信託財産である不動産について
最終的に買主がその不動産の所有権を取得する売買は
主に次の3つの形態が考えられます。
なお、信託条項に信託が終了すると信託財産は
受益者に帰属する旨の定めがあるものとします。

① 信託の目的に従って受託者が直接売却

不動産の処分を目的とする信託において、
目的に従いその不動産を売却すれば、
その不動産は信託財産ではなくなり、
買主はその不動産の所有権を取得することになります。



② 信託終了→受益者が売却

信託を終了させると、信託財産である不動産は受益者に帰属します。
(信託条項に定めがある場合)
受益者が不動産の所有者兼売主となり、
買主に対し売却します。



③ 受益権の売買→信託終了で所有権を取得

まず、受益権を受益者と買主の間で売買し、
買主が受益者となったところで信託を終了させれば
信託財産は受益者となった買主に帰属します。



①の形態は、収益物件の管理を目的とする信託が多いこと、
また、受託者である信託銀行などが
売主として瑕疵担保責任にを負うことになることなどから
あまり多くないと思われます。
また②の形態では、一旦受益者が所有権を取得することで、
受益者に登録免許税、不動産取得税の負担が生じます。
(不動産取得税の課税は受益者が当初委託者でない場合)

というわけで、実際はほとんど③の形態で売買が行われているようです。


2 合意による信託の終了


③の形態では、まず受益者と買主との間で受益権の売買を行い、
合意により信託を終了させて、買主に不動産を帰属させます。
通常はこれらを同日で行ってしまいます。

それでは、受益権の売買が行われた後、
どうやって、信託を終了させるのでしょうか。

信託の終了について、例えば
「受益者が受託者に対し、60日前に書面により通知することにより
いつでも自由に信託契約を解除することができる」
といった定めが信託条項にあることが多いようです。

しかし、③の形態では、買主は受益者となったその日に
信託を終了させるわけですから、
事前に受託者に通知して解除することはできません。

実際の取引では、受託者と受益者が
信託の合意解除の書面を取り交わしているようです。

しかし、合意による信託終了について、信託法は次のように定めています。
(委託者及び受益者の合意等による信託の終了)
第164条
 委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。
2  (略)
3  前二項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるとき
 は、その定めるところによる。
4  (略)
※ 信託の終了に遡及効がないため、
法では「解除」ではなく「終了」と規定しています。

信託条項の別段の定めで終了できないとなると
合意で終了させることになりますが、合意は
「委託者」と受益者で行うのであり、
「受託者」と受益者で行うのではありません。

では、「委託者」はいったい誰なんでしょう?

つづきは、次回
「信託財産である不動産の売買について2」へ。

投稿者: 司法書士 本多寿之