事務所ブログ

2012.09.28更新

1 判断能力が衰えた後の贈与


本人の判断能力が衰え、成年後見人が選任されると
原則として、本人の財産を贈与することはできません。
これを認めると、本人の財産を守るための制度が
逆に本人の財産を脅かしかねません。

では、将来、長男が住宅を取得するとき、
孫が大学に入学するとき、
資金を贈与するつもりにしていても、
そのとき判断能力がなければ贈与できない・・・
その備えとして家族信託の活用が考えられます。


2 家族信託の活用


前回の例を引き継いで考えます。
父を委託者兼受益者、次女を受託者として、
貸家と預金(今回は贈与する資金を含む)の一部を信託し、
自宅や自分の手元に置いておきたい預金は信託しません。

そして、例えば、長男が住宅を取得する条件で
孫が大学に入学する条件で
それぞれ受益権の一部を取得するよう定めます。



父の判断能力が衰えた場合、成年後見人が
信託しなかった財産の管理を行います。

一方で、長男が住宅を取得することになったとき、
孫が大学に入学することになったときは、
それぞれが受益権の一部を取得して
信託財産からそれぞれの資金の給付を受けます。


3 契約書の重要性


信託であらかじめ、決められた金額を
給付できるように定めておけば、
本人の判断能力が衰えても給付することができ、
最初に決めた金額以上は給付できないため
悪用されることもありません。

このように、信託では柔軟な
財産管理、給付、承継を定めることができ、
非常に自由度が高いと言えます。

裏を返せば、しっかり契約書でそういったことを
定める必要があるということになります。
どういうときに、どういうふうにしたいのか、なるのか、
誰が見ても明確な内容にする必要があります。

あいまいな内容ですと、例えば
受託者と受益者の解釈が違ってしまって
かえってトラブルの元にもなりかねません。

また、色々な可能性を想定する必要もあります。

実情や考えは家族によって様々です。
とするとそれに合わせて作成するべき
信託契約の内容も家族によって様々ということになります。

信託契約は、不動産の売買契約や
アパートの賃貸借契約など、比較的定型的な契約に比べると、
家族ごとに様々で、服に例えれば既製服ではなく
「オーダーメイド」の契約となると言えます。




財産の管理・承継について、遺言・相続のご相談、
家族信託(民事信託・個人信託)の設計・契約・運営のご相談は
北九州市小倉の角田・本多司法書士合同事務所までご連絡ください。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2012.09.27更新

家族信託の活用例です。
(信託についてはブログ「信託のしくみ」
信託の小まとめ」もご参照ください。)

例 高齢となった自分に代わり、
 次女に財産を管理して欲しい

  私の所有する土地には、                       
  私の自宅と貸家、次女夫婦の自宅が建っています。      
  私は最近、高齢となったためか物忘れがひどく、        
  貸家の契約や管理に不安があります。              
  貸家の老朽化も進んでおり、将来、大規模な修繕も必要です。
  次女は、以前から貸家業を手伝って状況を熟知しており    
  今の内に、すべてを任せたいと考えています。          
  しかし、成年後見人は私の判断力が衰えてからのもので、  
  裁判所などの監督下におかれると聞いています。        
  大規模な修繕や管理は次女の判断のみで行ってほしい。  
  また、今からすぐに次女に任せるためによい方法は・・・    
  


1 判断能力があるうちの財産管理


急速に高齢化社会を迎える日本において、
判断能力が衰えた高齢者に代わって
財産を管理するための成年後見制度は
不可欠のものだと思います。

本人に判断能力がある間は、成年後見人が
財産を管理することはできません。
本人が、誰かを代理人として財産管理を委任することも可能ですが、
貸家の賃借、修繕、関連した銀行での手続きなどは、
委任契約の有効性や、本人の確認を求められると
代理人が行うには、わずらわしさを伴うこともあるかもしれません。

2 信託の設定


そこで考えられる信託の活用です。


父を委託者受益者、次女を受託者として、
貸家と預金の一部を信託します。
家賃は次女が受け取りますが、
父が受益者として次女から配当を受けます。
家賃の一部は将来の修繕に備えて、
信託財産にとどめておくことも考えられます。

信託された財産は次女の所有となりますので、
貸家の賃借、修繕の契約は次女の名前でできます。
信託された預金も次女名義となるので
窓口での手続きもやりやすくなります。

※ 次女は、自分の預金と区別して管理する義務があります。(分別管理義務)

信託の目的で、貸家の売却はできない、と定めておけば、
次女は勝手に売却することはできません。

3 判断能力が衰えてから


自分の手元に置いておきたい財産は、信託しなければ
もちろん父が自由に使えますし、
判断能力が衰えて成年後見人が選任されれば、
成年後見人がその財産を管理します。
生活に必要な財産は成年後見が管理しながら
本人の身上監護に努めることができるでしょう。

貸家については、引き続き次女が自分の判断で管理を続けられます。



このように、成年後見を家族信託で補えば
財産ごとに目的に合った管理ができます。

※ 父が死亡すると信託は終了し、
信託財産は長女が取得するなどと定めておけば、
信託契約が遺言の役目もはたすことになります。

信託は、判断の能力のある間から、
判断能力が衰えた時期、自分の死亡後まで、
財産の管理や承継をあらかじめ決めることができます。


日経新聞に家族信託の記事が掲載されていました。

「家族信託で財産守る 遺言効果を生前から」

(日経新聞 平成24年6月2日)

投稿者: 司法書士 本多寿之

2012.09.24更新

※ 信託については、ブログ「信託のしくみ」
「信託の小まとめ」「「受託者」とその監督」もご覧ください。

いくら信頼できる人に受託者になってもらっても、
もし、受託者が自分の事業に失敗して、
多額の債務を負ってしまったら、
信託して預けた財産も差し押えられるのでしょうか。

信託すると財産の所有者は受託者になります。
しかし、財産から利益を受けるのは受益者です。
受託者の所有権は形式的とも言えます。

そこで、信託法23条では、
受託者の、信託に関係ない債権者は
信託財産に強制執行(差し押え)できないと定めています。


ですから、受託者が自分の事業に失敗して
多額の借金を負っても、
その債権者は信託財産を差し押えることができません。

一方、信託財産を管理するうえで受託者が負った債務
(信託財産責任負担債務 例 信託した貸家の修繕費用)について、
その債権者は信託財産に強制執行ができます。

また、信託財産は受託者の所有名義ですので、
信託に関係ない委託者の債権者も、
信託財産を差し押えることができません。


ですから、信託をした後に
委託者が保証をかぶって債務を負っても、
その債権者は信託財産を差し押えることができません。
※委託者が受益者の場合、受益権(例 配当を受ける権利)を
差押えることはできます。

つまり、信託財産は信託と関係のない債権者から
いわば守られている状態です。
これを、信託の倒産隔離機能と呼びます。
(個人でも、事業者でなくても「倒産」という言葉を使います。)



しかし、この機能は強制執行を免れるために悪用されかねません。
そこで、債権者を害する目的で行われる信託は
詐害信託として取り消しの対象となります。(信託法11条)

また、委託者=受託者の自己信託では、
所有者が変わらず、いつから、
財産が信託されているのかわかりにくいので
公正証書等の作成、または確定日付のある証書での
受益者への通知を義務付け、
信託がされた日付が明らかになるようにしています。

委託者が信託をしたときに債務を負っていない、
または信託に関係のない債務があって
十分に返済できる状態であれば、
その後、委託者が債務を負ったり
その債務の返済ができなくなっても信託財産は守られます。
受託者の、信託に関係ない債権者からも守られます。

そういう意味では、財産を信託することは、
将来の万が一に備えることにもなります。




財産の管理・承継について、遺言・相続のご相談、
家族信託(民事信託・個人信託)の設計・契約・運営のご相談は
北九州市小倉の角田・本多司法書士合同事務所までご連絡ください。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2012.09.20更新

今日は、信託における「受託者」についてです。



信託では、委託者が自分の財産を受託者に信託します。
財産の所有権は受託者に移り(受託者名義になり)
その後、受託者が管理・処分を行います。

信託財産は受託者の所有となりますが、
自分の好き勝手にできるものではなく、
信託の目的にしたがい、受益者の利益になるよう
管理・処分を行わなければなりません。


1 受託者の義務


そのため、受託者には様々な法律上の義務があります。

※ 信託契約でこれとは異なる定めをすることができるものがあり

その場合はその定めに従います。
 
①善管注意義務(信託法29条)
受託者は、善良な管理者の注意をもって、
信託事務を行わなければなりません。
「善良な管理者の注意」とは、受託者の職業、地位において、
社会通念上、要求される注意義務とされます。

②忠実義務(信託法30条)
受託者は、受益者のために忠実に
信託事務を行わなければなりません。

③公平義務(信託法33条)
受託者は、受益者が二人以上いるときは、
公平に信託事務を行わなければなりません。

④分別管理義務(信託法34条)
受託者は、信託された財産を自分の財産などの他の財産と
分別して管理しなければなりません。

⑤帳簿の作成等、報告及び保存の義務(信託法37条)
受託者は、信託財産について帳簿を作成し、
受益者に報告しなければなりません。
また、それらの書類を一定期間、保存し、
受益者に請求されたときは、閲覧させなければなりません。

⑥損失てん補責任(信託法40条)
受託者は、任務を怠ったことで
信託財産に損害を与えた場合は、
損害を補てん、または原状に回復する責任を負います。

⑦その他、利益相反行為の制限など

受託者の義務・責任は、少し重いように感じますが、
通常の委任でも善管注意義務などは負いますし、
身内が成年後見になったときも、
本人と後見人の預金なども、はっきり分けて管理するよう
裁判所などから求められます。
やはり、他人の財産を預かることになれば、
それ相応のわきまえをもって管理する必要があります。


2 受託者を誰にするか


法律で義務や責任が決められていても、
家族信託で、受託者本人がそれを守らなければ意味がありません。
当然ですが、信頼できる人を受託者にしなければなりません。

また例えば、自分の子を受託者にする場合、
他の子との関係も考える方がよいでしょう。
財産は受託者の所有となりますので、
他の子が変な疑いの目を向けることがあるかもしれません。
逆に、受託者になった子が、
自分だけに負担がかかってると不満をもつかもりれません。

できるだけ家族、関係者全員の理解を得た上で、
受託者を決め信託を行うことが好ましいと思います。

信託銀行や信託会社を受託者とすることもできます。
(司法書士や弁護士は、信託について許可・免許がなければ受託者になれません。)
しかし、信託報酬が負担できない、したくない、
第三者に財産を預けることに抵抗があるということもあるでしょう。
また、財産の内容によっては、信託銀行などが引き受けないこともあります。

一方で、家族間で対立があり、それ以上対立を深くしないために
独断で信託を行うこともあるかもしれません。
そんなときは、第三者である信託銀行などを受託者とした方が、
かえってしがらみがなくなり
対立を鎮めることができる場合もあるかもしれません。

誰に託すか、
受託者を誰にするかは非常に重要です。


3 信託監督人の活用


受益者は、帳簿閲覧の請求などを通して、
受託者を監督することができます。
しかし、受益者が高齢になる、判断能力が衰えるなどして
十分に監督できなくなる恐れもあります。

そう考えると、信頼できる人を受託者にしても
完全に不安はなくならないのかもしれません。

そいうとき、受益者に代わり
受託者を監督する役目をになう「信託監督人」を置くことが考えられます。
信託監督人は、受託者を監督することについて、
受益者と同じ権限を持っています。

他の子を信託監督人にしておく、
あるいは、司法書士などの専門家を
信託監督人にしておくことも考えられます。
(信託監督人には許可・免許は不要です。)


受託者の役割、責任を理解した上で、
信頼できる受託者を選び、
必要に応じて監督人を置くなどして、
信託の目的を円滑に、そして円満に達成できるよう
最初の段階で、十分に考える必要があります。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2012.09.17更新

前回、お話ししたように、受益者の死亡により、
他の者が新たに受益者となる信託を
後継ぎ遺贈型の受益者連続型信託と呼び、
遺留分に注意する必要があります。

遺言による遺贈などにより、相続分がなくなった、
または少なくなった相続人は、ある一定の割合を主張できることがあります。
その割合を遺留分、主張する権利を遺留分減殺請求権といいます。
(ブログ「遺言と遺留分の話」をご覧ください。)

 

例として、最初の受益者を夫、夫死亡後の第2受益者を妻、
妻死亡後の第3受益者を長男とする信託で考えてみます。

夫が死亡すると、妻は受益者となります。
受益権は信託財産から生じる利益を受ける権利ですが、
妻は信託により受益権を取得しているのであり、
夫からの贈与でもなく、遺言による遺贈でもありません。
しかし、これに遺留分減殺請求権を認めなければ、
他の相続人と比べて不公平です。

というわけで、上の例で、父の死亡で受益者が母となったことで、
長女、次男と次女の遺留分が侵害された場合には、
長女、次男と次女は遺留分減殺請求ができます。

そして、母が死亡するまで長男は受益者になりませんが、
①母は自分が生存している間の受益権を
②長男は母死亡後から信託終了までの受益権を
父の死亡により同時にそれぞれ取得したと考え、
それぞれが父の相続の時点で遺留分減殺の対象となります。


ですから、母が死亡して長男が受益権を取得したときは、
遺留分減殺請求はできまん。
遺留分減殺請求は、最初の相続のときのみということです。

信託も遺言と同じように、遺留分減殺請求の影響を受けます。
信託で決めたとおりに財産を確実に承継させるためには、
他の相続人に遺留分を確保できるよう他に財産を残すなどの
手当が必要となることがあります。

※ 課税においては、
 父の死亡時に、母が信託財産を取得したものとして相続税が、
 母の死亡時に、長男が信託財産を取得したものとして相続税が
 課税され、それぞれ課税の時期は異なります。



財産の管理・承継について、遺言・相続のご相談、
家族信託(民事信託・個人信託)の設計・契約・運営のご相談は
北九州市小倉の角田・本多司法書士合同事務所までご連絡ください。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2012.09.15更新

今回は、今まで何度かお話しした
「受益者連続型信託」のお話です。

例 3 店舗を長男から次男の息子に承継させたい

  私は長年、うどん屋を営んできました。               
  最近は高齢となった私に代わり、長男が実質的な経営者です。
  ですから店の経営は長男の代までは安心ですが        
  長男の息子は大学卒業後、教員になりました。          
  まず、店を継ぐことはないと思います。               
  ところが数年前から次男の息子が店を手伝うようになました。 
  次男の息子は仕事の覚えも早く、                  
  客商売にも向いていて、店が活気づいたように思います。   
  まだ遠慮して口には出しませんが、                
  長男の後は自分が店を継ぎたいと思っているようです。    
  私もそうなれば安心なのですが、私名義の店舗は、      
  私が死んだら長男が相続するとして、               
  その後、店を継ぐ次男の息子は長男の相続権はありません。
  次男の息子に店舗を承継させる方法はないでしょうか・・・   


  
1 遺言を利用する方法


遺言では、自分の死んだ後に発生した相続について
財産を承継する者を指定することはできません。
「店舗は長男が相続し、長男が死んだら次男の息子が承継する」
という遺言を残しても、次男の息子は承継できません。

ならば、父が「店舗は長男が相続する」と遺言をし、
長男が「店舗は次男の息子に遺贈する」と遺言すれば
父の願いはかなえられそうです。

しかし、長男はその気になれば、
いつでも遺言を書き替えられます。
長男の一人息子や妻に反対されて書き替えるかもしれません。


2 家族信託を利用する方法


信託では、自分の死後、発生した相続について
実質的に財産の承継者を指定できます。

父を委託者受益者、次男の息子を受託者
店舗と土地を信託財産として信託を設定します。
また、父の死亡後は長男が受益権を引き継ぎ、
長男の死亡で信託は終了し、
店舗と土地(残余財産)は次男の息子が取得すると定めます。


店舗の所有権は次男の息子に移りますので、
信頼関係が不可欠ですし、不安もあるかもしれません。
しかし、受託者は受益者のために財産を管理するのであり、
財産から利益を受けるのは受益者です。
さらに、受託者は受益者の指図にしたがい財産を管理すると
定めておけば、最初は父が、父の死亡後は長男が、
管理について次男の息子に指図できます。


3 後継ぎ遺贈型の受益者連続型信託


このように、受益者の死亡により、
他の者が新たに受益者となる信託を
後継ぎ遺贈型の受益者連続型信託といいます。

最初の受益者をA、Aが死亡したらBが受益者、
Bが死亡したらC、Cが死亡したらD・・・と
信託を設定した当初に定めることができます。

しかし、信託設定から30年経った以降に、
受益者となった者が死亡すると、
その後に受益者となる者が指定されていても
信託は終了します。
(ブログ「信託の小まとめ」をご覧ください。


4 注意点


自分の死亡後、30年超先のことまで指定できることは、
便利である反面、30年後、事情が変わった場合でも
関係者を拘束し続けることになりかねません。
慎重に考えるべきでしょうし、信託の規定の中に、
途中で変更できる余地を残す必要もあるかもしれません。

遺留分減殺請求権の行使の対象となることにも
注意が必要ですが、詳しくは次回、お話しします。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2012.09.13更新

前回に続いて、
財産を贈与したい、でも引続き管理もしたい・・・
そんなときの、家族信託の活用例です。

例2 孫に贈与した預金が、相続税の対象に?

  幼い孫に将来の進学資金として        
  贈与をしたいと考えています。         
  1人あたり1年間に110万円以内ならば、  
  贈与税もかからないとのことですし、     
  相続税対策にもなると思います。       
  しかし、幼い孫に直接渡せるものでもなく、 
  孫の親(自分の子)に渡すと、         
  親自身のことに使われそうですので、    
  孫名義の預金にしておいて、          
  通帳は私が管理したいと考えていますが・・・


1 贈与した財産の管理を続けることの問題点


一人の人が1年間に受ける贈与は、
110万円までならば贈与税は課税されません。
もし、孫が4人いて、1年間で一人あたり110万円、
合計440万円を贈与しても孫に贈与税はかかりません。
(その年、孫が他の人から贈与を受けていない場合)

死亡前、3年以内の贈与でなければ、
税法上、相続税の課税対象にもなりませんので、
相続税対策にもなる・・・
こんな、節税の方法をよく聞きます。

しかし、孫や孫の親に内緒で孫名義の預金通帳を作り、
その後も、通帳を祖父が管理していた場合、問題があります。


そもそも、贈与が成立しているかどうかです。
贈与は契約です。
贈与する人、それを受ける人の合意で成立します。
幼い孫は契約を結ぶことはできません。
親権者である孫の親が法定代理人として、
合意すれば贈与は成立します。

でも、実際は、祖父が、
孫にも、孫の親(祖父の子)にも内緒で
通帳に預金をしています。
これでは贈与は成立しません。

また、相続調査において、税務署の調査官は、
誰が財産を管理していたかを重要視するようです。
祖父が管理していた預金通帳が
いくら孫名義になっていても、
祖父の財産として相続税の対象とされる可能性があります。



2 信託なら祖父が管理を続けられる


そこで、祖父は一旦、孫に贈与して、
孫を委託者受益者
祖父を受託者として信託契約をします。
(幼い孫の親が親権者として各契約をします。)

あるいは、
自分を委託者受託者(自己信託)
孫を受益者として信託を設定します。

ところで、信託契約は委託者と受託者の契約で成立しますが、
委託者=受託者の自己信託では契約はできません。
そこで、自己信託の場合、
公正証書、その他の書面に定められた事項を記載し、
公正証書等であればそれを作成した時に、
その他の書面であれば、
受益者に確定日付のある証書で通知した時に
信託の効力が発生します。

孫や子に知られたくないのなら、
祖父が委託者兼受託者となって公正証書等を作成する、
それが、面倒ならば配偶者などを受託者にして、
受益者に通知をしなくてよいと
信託で定めておく、ということが考えられます。
(自己信託は公正証書か確定日付ある証書での通知が必須です。)

祖父を受託者、孫を受益者として預金を信託すれば、
祖父が信託財産として管理を続けることができ、
課税上は、死亡前3年内でなければ、
受益者に贈与されたものとして、相続税の対象となりません。

(もちろん贈与税は孫の財産から納税します。)



信託されていることを明らかにするには、
公正証書など書面にしておくことが重要です。
信託はしくみが複雑な部分もありますので、
契約書など書面の作成は専門家にご相談されることをお勧めします。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2012.09.12更新

財産を贈与したい、
でも、贈与した後もその財産を管理したい・・・
そんたときの、家族信託の活用例です。
(信託については、ブログ「信託のしくみ」
「信託の小まとめ」をご参照ください。)

例1 長男に株を贈与したいが・・・(事業承継)

 自分で起こした会社、            
 経営は順調で、将来会社の資産も増えそうです。
 まだ若い長男も会社で働いています。     
 株の価値が上がる前に、           
 長男に株を贈与しほうがいいのかもと考えますが
 まだ経営を任せるには時間がかかりそうです。 
 それに、贈与して長男が株主になったあとに  
 もし、長男との関係が悪くなって、      
 私の意に反して株主の議決権を行使されたら・・


父親が長男に影響力を持っている間はいいとして、
長男との関係が悪化してしまうと、
株主である長男が議決権を行使して
父親の意志に反する経営を要求する、
場合によっては父親を社長から解任する・・・

株を贈与した後も、議決権を行使して
会社の経営を続けていく方法として
信託の活用が考えられます。


①長男に贈与した株を信託財産、
 父親が受託者として議決権を行使



まず、長男に株を贈与します。
同時に、長男を委託者受益者
父親を受託者とする信託契約を結びます。

株を所有するのは委託者である父親ですから、
父親は議決権を行使し、経営を続けることができます。


②父親を委託者兼受託者、
 受益者を長男として株を信託



一旦とはいえ、贈与して株が長男の
ものになることに抵抗があるのならば
自分を委託者受託者(自己信託)、長男を受益者として
株を信託する方法も考えられます。
※ 自己信託については次回も参照してください。

受託者はやはり父親ですので、
父親が議決権を行使しできることは①と同じです。


①と②に共通すること

早めに株を譲渡したいが経営権は握っていたい
信託にはそのような事業承継の悩みを解決できる可能性があります。

株を信託することで、長男に実質的に贈与した株式を
父親が議決権を行使できるので、
引き続き管理することと同じ状態になります。

株から生まれる利益(配当など)は受益者である長男のものです。

父親が死亡したときに信託が終了すると定めておけば、
その時点で長男が株の完全な所有者となります。

父親の生前に、長男に経営を任せられるときがきたら、
長男と信託契約を合意で解除して、
長男に株の完全な所有権を取得させることができます。

①は贈与した時点で、②は信託契約の時点で
贈与税の対象になります。
※ ②では株は贈与されていませんが、
 受益者が贈与で株を贈与で取得したものとして課税されます。
 ですから、父親が死亡したとき株は遺産とならず
 相続税の課税対象になりません。


次回も、贈与した財産を引き続き管理する
信託の活用方法のお話です。


財産の管理・承継について、遺言・相続のご相談、
家族信託(民事信託・個人信託)の設計・契約・運営のご相談は
北九州市小倉の角田・本多司法書士合同事務所までご連絡ください。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2012.09.03更新

前回まで、信託について
子どものいない夫婦の例を中心に見てきました。
このような、親族間などで財産の管理、承継に
利用する信託は「個人信託」「家族信託」と呼ばれたりします。
(定義は必ずしも一定ではありません。)

今回は、このような信託について
特徴や注意点などの概要を小まとめしてみます。

1 しくみ


委託者が自分の財産を、受託者に預け
受託者は定められた目的に従って財産の管理・処分を行います。
受益者がその財産から得られる利益を受けます。


受託者に預ける財産・・・「信託財産」
利益を受ける・受託者を監督する受益者の権利 ・・・「受益権」
※ 家族である個人が受託者となることはできます。(民事信託)
 しかし、営利目的で反復継続して行うには、免許・登録が必要です。

信託は次の3つの方法で成立します。
①委託者と受託者が契約を結ぶ
②委託者が遺言で定める
③公正証書など書面による意思表示(委託者=受託者のとき)


2 利益を受けるのは受益者、でも信託財産は受託者の所有


信託財産から利益を受けるのは受益者ですが、
信託財産の所有権は委託者から受託者へ移転します。
つまり、信託財産の所有者は受託者となります。


その結果・・・
・ 受託者は自分の名前で、財産の管理・処分ができます。
 →管理・処分のための契約は、受託者が当事者となりますので、
  委託者が将来海外に行く、判断能力が衰えるといったことを
  心配する必要がありません。

・ 信託財産は委託者の所有ではなくなりますので、
 委託者の債権者は、信託財産を差押えることができません。

 →倒産隔離機能と呼ばれています。しかし、信託の設定当初、
  すでに差押えられる危険性があったなど
  債権者を害することを知っていた場合、
  信託は取り消されることがあります。(詐害信託)

しかし、通常の所有者と異なり・・・
・ 受託者は信託の目的となっていなければ、
 勝手に財産を売却したり投資したりできません。

 →受託者は信託の目的や受益者の指図に従って
  管理・処分を行わなければなりません。

・ 受託者は、自分の財産と信託財産を
 分別して管理しなければなりません。(分別管理義務)

 →不動産は受託者名義となると同時に、
  信託財産であることも登記されます。

・ 信託と関係のないところで、受託者が負った債務のために、
 信託財産が差押えられることはありません。



3 自分→妻→長女・・・といった財産の承継を指定できる

                                (受益者連続型信託)

自分が死亡した後に発生した相続について、
受益権を承継する者を指定できます。


信託の設定時に、最初の受益者を自分、
自分が死亡したら妻、妻が死亡したら長女、
長女が死亡したら長女の子、その次は・・・というようにです。

受益権がA→B→C→D→Eと移転すると指定した場合で
信託から30年経過後、受益者がCだったとき
Cの死亡後、受益権はDに移転しますが、
Dの死亡で信託は終了します。
(30年間、財産をある意味、固定化することが、
相続人のためになるか、検討は必要でしょう)


また、信託終了後、残った信託財産(残余財産)を誰が取得するか
信託設定時に指定できます。


これらの信託の特徴を使えば、通常の遺言ではできない
自分が死亡後に発生した相続について、
財産から利益を受ける者、財産を取得する者の指定ができます。



4 課税の原則について(受益者等課税)


受益者は、信託財産から経済的な利益を受けます。
そこで、課税上は受益権を有する受益者が
信託財産を所有しているものと考えます。

※ ここでは、受益証券は発行されていないものとして、
 原則的な課税関係を説明します。
 相続税や贈与税には基礎控除もあります。
 具体的な課税については、税務署や税理士にご確認ください。

① 信託設定当初
・ 委託者=受益者(自益信託)の場合
 →委託者自らが受益者となる信託を自益信託といいます。
  その場合、もとの所有者がそのまま受益者となっていますので、
  課税関係は生じません。

・ 委託者 受益者の場合
 →もとの所有者の委託者から、受益者に信託財産が贈与されたと考えて、
  受益者に贈与税が課税されます。

② 信託設定後
・ 受益権を無償で譲り受けた場合
 →信託財産の贈与と考えて、新しい受益者に贈与税が課税されます。

・受益権を売買した場合
 →売った方が信託財産を譲渡してものと考えて、譲渡所得税が課税されます。

・前の受益者の死亡により受益権を取得した場合
 →前の受益者から信託財産の遺贈を受けたものと考えて、
  相続税が課税されます。

③ 信託終了時
 ・残余財産の取得者=受益者の場合
 →課税されません。

 ・残余財産の取得者 受益者の場合
 →残余財産の贈与と考えて、取得者に贈与税が課税されます。

④ 不動産取得税
 →信託終了時に課税されますが、
  設定当時、委託者=受益者で、信託の期間中、受益者の変更がなく、
  残余財産をその受益者が取得する場合は課税されません。


財産の管理・承継について、遺言・相続のご相談、
家族信託(民事信託・個人信託)の設計・契約・運営のご相談は
北九州市小倉の角田・本多司法書士合同事務所までご連絡ください。

投稿者: 司法書士 本多寿之