事務所ブログ

2013.07.02更新

ここ数か月、当事務所のホームページを
「裁判所 書類 受け取らない」
「特別送達 本人以外 受け取る」などのキーワードで
検索してご覧いただいている方が多いようです。

ブログ「裁判所からの書類は受け取らなければ怖くない?」で
裁判所からの書類を受け取らないことで
不利益はあっても利益はほとんどないとお話ししました。
今日は、補足説明を加えてみたいと思います。


1 家族・従業員が受け取った場合


訴状、裁判の呼出状などは
裁判所から「特別送達」という郵便で送られてきます。
書留郵便に似た郵便で、不在だからといって
ポストにそのまま入れるようなことはありません。
不在通知を置いていきますので、
郵便局に電話して配達を依頼することができます。

送る場所は次のとおりです。(民事訴訟法103条)
1 受け取る者の住所(法人なら営業所・事務所など)
2 1がわからない、支障がある場合は就業場所
つまり、自宅で受け取らないと、
勤め先に送ってくることもあり得るということです。

送った場所で受け取るべき者がいない場合、
1の場合、そこにいる同居人、従業員などに
2の場合、そこにいる従業員などに渡すことができます。
なお、上の2の場合は従業員などが受け取りを拒まない場合です。
上の1の場合は、拒まれてもそこに置いていくことができます。

同居人、従業員が受け取った場合、
自宅などで受け取りを拒まれて置いていった場合、
いずれも本人が受け取ったのと同じように裁判は進みます。

ですから、本人でない家族・従業員などが受け取ったときは
早急に本人に裁判所からの書類を本人に渡す必要があります。



2 注意すべき点


受け取らないことで不利になることが多いのですから、
裁判所から特別送達が届いて
受け取るべき本人がいない場合でも、
家族や従業員は受け取って本人に渡すべきでしょう。

しかし、もうそこには住んでいない、
もうそこには勤めていないような場合は、
「ここにはいません」と受け取りを拒否するべきでしょう。
特に、以前の勤め先の従業員が受け取ってしまって
本人から「なぜ、勤めていないのに受け取ったんだ。」と
言われると困ると思います。

もっとも、そこには住んでいないが、
本人はどこかに隠れていて、郵便はとどかない状況
しかし、家族は連絡がとれるという場合は
受け取って本人に知らた方がよいかもしれません。

いずれにしろ、本人が裁判を起こされていることを知り、
訴状の内容を確認することが大切です。



なお、そこに住んでいる、勤めているのに
受け取らなかった場合でも
「書留郵便に付する送達」により、
発送した時に受け取ったものとみなして
裁判は進んでいきます。
(ブログ「裁判所からの書類は受け取らなければ怖くない?」)

投稿者: 司法書士 本多寿之

2013.06.13更新

ホームページの遺言のページで
遺言を公正証書で作成するメリットを紹介しています。

ところで、遺言だけでなく
様々な契約書を公正証書にすることがあります。
公正証書で契約書を作成する利点についてご紹介します。

1 証拠力が高い


公正証書は、公証人が作成した公文書です。
民事訴訟法に公文書についての規定があります。
民事訴訟法228条
 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
 2  文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認める
  べきときは、真正に成立した公文書と推定する。
   (以下省略)

「成立」とは、分かり易く言えばその人が作ったかということで、
民事訴訟で文書が証拠として採用されるには、原則として
本当にその人が作ったものか証明が必要ですが、
公文書であれば、そこに名前のある公務員が
本当に作ったものだと推定されます。

なので、相手方が「偽造公文書だ」などと反対のことを証明しない限り
その公文書(公正証書)は証拠として採用されることになります。


2 執行力がある


通常、相手の財産を差押える(強制執行)には
確定した判決などが必要で、言い換えれば
差押えする前に、民事裁判などを起こさなければなりません。

しかし、金銭の支払いなどを目的とする請求について
作成された公正証書で、相手方が強制執行に服する旨が
書かれてあれば、判決などがなくても強制執行ができます。

そういう意味で、公正証書には執行力があり、
そのような公正証書を「執行証書」と言います。

ですから、例えば借用書(金銭消費貸借契約書)を
公正証書で作成した後に、借主が支払いをしなければ、
貸主は裁判をすることなく、借主の財産の差し押さえができます。

※ ただし、公正証書を事前に借主に送達してもらっておく、
 公正証書に執行文を付与してもらうなど、
 強制執行のための前準備は必要です。

(差押えについてはブログ
Q.借金を返してくれない知人の財産を差押えたい1」などをご覧ください。)


その他、遺言のメリットでも触れましたが、
専門家である公証人が作成しますから
内容・表現が的確であるのはもちろん、
原本を公証役場で保管しますので、もし紛失しても
いわば「再発行」が可能、などのメリットがあります。

デメリットは、費用がかかる
原則、当事者が公証役場に出向く必要がる
といったところでしょうか。

しかし、実際はこのデメリットが障害となって
なかなか一般的な契約書を公正証書にすることは
少ないかもしれません。

私文書は、公正証書比べれば証拠力は弱く、
執行力もありませんが、
作成しないことと比べれば、裁判において雲泥の差があります。
まずは書面で残しておく、これが大切だと思います。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2013.06.04更新

相続税の基礎控除が引下げらることとなり、
生前贈与が脚光を浴びているようです。
一般的な週刊誌にも贈与の特集がされたりしています。

しかし贈与については、相続税対策だけでなく
遺留分の請求に備えた贈与の相談を受けることがあります。

遺留分についてはブログ「遺留分の話」で触れていますが、
簡単に言うと、遺言などで遺産を全くもらえない、
少ししかもらえない相続人が一定の割合の主張ができる制度です。

ですので、生前に贈与しておいて、遺産からはずしておこう
ということで、生前贈与を考えるのです。
贈与した時の贈与税の問題はあるものの、
生前に贈与しておけば、死後遺留分を主張される心配がない・・・
しかしこれでは、遺留分の制度が骨抜きになってしまします。

「遺産」と書きましたが、遺留分の計算について民法1029条は
「・・・被相続人が相続開始の時において有した財産の価額に
その贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して・・・」
と規定しています。

つまり、死亡した時点で残っていた財産のみならず、
生前に贈与した財産も遺留分の計算の基礎となるのです。
やはり、抜け駆け的な贈与に一定の制限をしているのです。

もっとも、生前贈与がすべて遺留分の計算の基礎となる訳ではなく
民法1030条
「贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、
前条の規定によりその価額を算入する。
当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って
贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。」

つまり、死亡前一年間の生前贈与は無条件に
それ以前の贈与については、贈与する方・もらう方両方が
その贈与によって、遺留分権利者の遺留分を確保できなくなることを
知っていた場合、贈与した財産も加算して計算します。

では、遺留分対策の生前贈与は無意味でしょうか?
これは、遺言をするかどうかと同じことが言えます。

ブログ「遺留分の話」でも触れたように、
遺留分の主張は、贈与・遺言をした人が死亡したことと、
遺留分を主張できる贈与・遺言があることを
を知った日から1年以上経つとできなくなります。

知らなくても死亡から10年経つとできなくなります。

また、遺言も贈与も、その人の意志ですから、
それに反して遺留分を主張することに抵抗を感じて
遺留分の主張をしないかもしれません。

遺留分を主張する人の考え方次第ですが、
生前贈与も意味を持つこともあると思います。

同時に、遺言と同じく、生前贈与も
100%望みどおりになるとは限らないことも、
頭に置いておくべきだと思います。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2013.05.24更新

差押えについては、昨年の4月から5月にかけて
このブログで何度かとりあげました。

今日は、差押える側でもなく、差押えられる側でもなく、
しかし、差押えの関係者となる
給与差し押さえの場合でいえば雇い主のお話です。


1 債権差押え


例えば
①従業員が雇い主から給料を支払ってもらう権利(給与債権)、
②預金を銀行から払い出してもらう権利、
③貸したお金を返してもらう権利、
こういった権利を債権といいます。
なので、これらのものを差押えると「債権差押え」となります。

差押えるのは債権であり、
①給料支払い前に雇い主が持っているお金、
②銀行の金庫にあるお金、
③お金を借りた人が持っているお金を差押えるのではりません。
これらの債権差押えの債務者は
①なら従業員、②なら預金している人、③ならお金を貸した人
ですので、①雇い主、②銀行、③お金を借りた人の財産は
差押えることができませんが、差押えの関係者と言えます。
(「第三債務者」といいます。)




2 第三債務者(雇い主)はどうすればいいか


従業員の給料が差押えられたとき
まず、雇い主のところに裁判所から差押え命令が届きます。
第三債務者である雇い主はどうすればいいのでしょうか。

これについては、民事執行法に規定があり、
第三債務者に対し債務者への弁済が禁止されます。(145条)
つまり、雇い主は従業員に給料を支払ってはならないことになります。
もっとも、給料の場合、差押えられるのは原則として4分の1まで
残りの4分の3は支払っていいことになります。
(この計算には例外もあります。152条)

もし、差押えられた給料を全部支払ったらどうなるでしょう。

裁判所からの差押命令が従業員(債務者)に送達されて
1週間が経過すると、差押えた人(債権者)は
雇い主(第三債務者)に対して
「給料の4分の1を直接自分に支払ってくれ」と言えます。
(債権者の取立て 155条)
そのとき雇い主は「給料全部を従業員に支払ったので、
あなたに支払いはできない」とは言えないのです。

裁判所から禁止されたにもかかわらず支払ったのですから
その責任は雇い主にあり、
雇い主は差押えた人(債権者)にも支払う
つまり、二重払いをしなければならなくなるのです。


2 差押えが重なった場合


1者だけでなく、2者以上の債権者が給料を差押えることで
給料差押えが重なった(競合)した場合は
どちらにどれだけ支払えばいいのか迷いそうです。

しかし差押えが重なった場合、債権者に直接支払うのではなく、
法務局に供託しなければなりません。(156条2項)
後は、裁判所が配当ということで債権者に分配します。

差押えが続く限り、毎月給料の支払いのときに、
4分の1を法務局に供託しなければなりません。

また、差押えが重ならない場合でも、
差押えから1週間たって債権者から「私に直接払え」と言われて
はたしてこの人に支払っていいのかと不安になるかもしれません。

差押えが重なっていない場合でも
法務局に供託することはできます。
(156条1項)
支払い(配当)は裁判所がしますので安心です。

なお、いずれの場合も供託した時は、
裁判所にそのことを届けなければなりません。(156条3項)




以上のことは、
家賃を差押えられたときの賃借人、
請負代金を差押えられたときの発注業者などでも
同じことが言えます。

対応を誤ると二重払いの危険があります。
また、供託手続きは司法書士が代理して行える業務ですので、
迷われたときは是非ご相談ください。






投稿者: 司法書士 本多寿之

2013.05.03更新

「時効で借金を返さなくてよくなった」
「時効で土地が他人のものになった」
「時効」という言葉を聞いたことがあると思いますが、
今回は、権利が消滅してしまう
「消滅時効」についてお話しします。


1 消滅時効


権利があるのに、長い期間、行使しなかったため
権利が消滅してしまう、それが消滅時効です。

例えば、他人にお金を貸して、
返済時期が過ぎて返してくれないのに
催促や裁判もしないまま10年以上経過したあと
相手が「時効だから返さない」と言われると
お金を返してもらう権利が消滅してしまいます。

「権利の上に眠る者は保護に値せず」という
言葉があり、権利を使わない期間が長期間になると
権利がない状態と同じになると考え消滅させる
というイメージでしょうか。

消滅時効にはいくつか要件があります。


2 「長期間」とは?~期間と起算点


「長期間」とはどれぐらいの期間でしょうか。

お金を貸したなどの一般的な債権は10年で消滅します。
ではいつ(起算点)から10年でしょうか。
これは、権利を行使できるときから、つまり貸してもらえるときからで、
返済時期を決めていたならば返済時期から
決めていなければ貸したときから10年です。

その他民法では、
家賃など定期的な支払いを目的とする債権は5年
医師、薬剤師などの診療・調剤に関する債権は3年
飲み屋などの飲食料に関する債権は1年
など、10年より短い期間のものを規定しています。
(今後、法改正で期間を統一する方針で検討されています。)

また、銀行や消費者金融などがお金を貸すなど
商行為によって生じた債権は5年で時効消滅します。

「3年」「5年」などは、権利を行使できるときからが起算点で
返済時期から、お金を支払わなければならないときから
「3年」「5年」や「10年」経過してから時効消滅です。

なお、裁判で確定した債権は、
10年より短いものも10年となります。

では、支払い時期がきても支払わなくて
「3年」「5年」や「10年」などの期間が経てば
必ず払わなくてよくなるのでしょうか?

3 時効の中断


その場合、債権者が権利を行使すれば時効は中断し、
例えあと一週間で時効が完成するところまできていても
また一度1日目に戻り、ご破算となります。

時効が中断してご破算となるのは次のケースなどです。

① 裁判上の請求
 裁判所に訴状などを提出して訴えなどを提起・申立すれば
 時効は中断しますが、却下されたり取下げたりすれば
 時効は中断しません。

 また、相手(債務者)に直接請求(催告)した場合は、
 6ヶ月以内に裁判上の請求などをしなければ
 時効は中断しません。

② 差押え、仮差押えなど

③ 承認
 これは、相手(債務者)が「借金があります」「支払う義務があります」と
 自分で債務があることを認めることです。
 また、元金や利息の一部を支払う行為は、
 債務全部があることを認めたとして、時効は中断します。


時効が中断してから、「10年」などの期間が経てば
時効が完成しますが、その間に中断すれば
またそこから「10年」などの期間の経過が必要です。

また、期間が経過して時効が完成した後でも
承認すると時効の利益を放棄したものとして、
やはり期間はご破算になってしまいます。



そして、期間が経過したあと、
権利を完全に消滅させるために必要なものがあります。


4 援用(えんよう)


時効が中断せず、「10年」などの期間が経過しても
「時効だから払いません」など、
債務者が時効により権利が消滅するという利益を受けることを
債権者に伝えなければなければなりません。
これを、時効の「援用(えんよう)」といいます。

時効の期間が経過しても、
債務者が支払いたければ支払って構いません。
しかし、支払わないならば時効を援用することを債権者に伝える必要があり、
口頭で伝えてもいいのですが、
証拠が残るように内容証明郵便で通知することが好ましいでしょう。


時効については、よく要件を確認しておかなければ
「時効が完成して支払わなくてよかったのに、
債務を認めて時効がご破算になった」
「裁判を起こさなかったので時効が完成して、権利が消滅した」
などの不利益を被ることになりかねません。


北九州市小倉北区、小倉南区、門司区、戸畑区
若松区、八幡東区、八幡西区とその近郊にお住いの方で、
訴状の作成、差押え強制執行等の書類の作成、
簡易裁判所での民事裁判手続きは当事務所までご連絡を

投稿者: 司法書士 本多寿之

2013.03.13更新

賃貸アパート・マンションの大家、
つまり所有者が変わった場合、
賃借人はそのまま住み続けることができるか
ということについて考えてみます。

借家権の対抗


住み続けることができるかどうかは、
新しい所有者に対して、
自分は住み続ける権利があるんだと言える、
つまり借家権を主張(対抗)できるかどうかで決まります。

これについは、借地借家法に規定があります。
(建物賃貸借の対抗力等)
第31条  建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。

借家人は、建物の引渡しを受ければ、
その後に物権を取得した者に借家権を主張できます。
住んでいれば当然、引渡しを受けたことになります。
早く自分の権利を主張(対抗)できる要件を
備えた者が優先する、そういったイメージです。


アパート・マンションが売買された場合


そうすると、借りているアパート・マンションが売買され、
所有者が変わったとしても、
先に引渡しを受けている賃借人は
新しい所有者に自分の借家権を主張できる、
つまり、住み続けることができます。

自分の借家権とは、借りて住み続ける権利のみならず、
家賃や敷金など、賃貸借契約の内容全部を含みます。
新しい所有者が当然に家賃を値上げできる
ということはありません。

もっとも、経済事情の変動や近隣と比較して
不相当となったなどの理由で値上げの請求ができるのは
所有者が変わっても変わらなくても同じです。
(ブログ「家主が家賃を上げると言ってきました。」参照)


アパート・マンションが競売された場合


では、アパート・マンションが競売されて
所有者が変わった場合も同じでしょうか。
考え方は同じです。
しかし、競売の場合は、住んでいる人の借家権より
先に対抗できる要件を備えている権利、
つまり優先する権利があることが多いと思います。
その権利とは抵当権などの担保権です。

アパートやマンションを建てた、
または買ったことで所有者になった人が、
その資金を銀行などから借りたことで、
担保としてアパートやマンションに
抵当権が設定されることは多いと思います。

抵当権も「物権」であり、登記することで
第三者に対抗できる要件を備えます。
そして、その後、アパートを借りた人の借家権は
抵当権に遅れる権利となってしまいます。

もっとも、所有者が銀行に返済していれば、
抵当権者である銀行が、
「自分の方が優先しますから出て行ってください。」
なんてことは言えません。
しかし、返済が滞ると、銀行は裁判所に競売の申し立てができます。

競売でアパート・マンションの所有者となった人は、
抵当権に遅れる権利は引き継ぎません。
つまり、抵当権が設定された後に借家人となった人は、
競売で新しく所有者となった人にも自分の借家権を主張できない、
つまり、「出ていけ!」と言われたら、
出ていかないといけないのです!

(6か月の猶予はあります。)

一方、抵当権が設定される前から住んでいる借家人は、
自分の賃借権を主張(対抗)できますので、
競売の後もそのまま住み続けることができます。



実際は、賃貸アパート・マンションを競売で買う人は、
やはり賃貸目的のことが多いでしょうから、
家賃を払ってくれれば、そのまま住んでいいですよと
なることが多いとは思います。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2013.03.03更新

アパートやマンションを賃貸していたところ、
賃借人が数か月分、家賃を滞納したので
催促に行ったところ、部屋にはいない、
すでに数か月前から部屋には帰っておらず、
行方不明になっていた、
ということはあり得る話です。

家主としては、早く次の人に貸したいところですが、
勝手に家財道具を撤去して、
次の人に貸してもよいのでしょうか?

賃貸借契約が解除されるなどして終了しない限り
賃借人は部屋を使用(占有)することができます。
家賃を滞納していても同じです。

賃借人に部屋の明け渡しを求めるのであれば、
契約を解除し、賃貸借を終了させなければなりません。

家賃滞納を理由として解除するときは、
原則として、まず家賃の支払いを催促して
それでも払わなければ解除、という
2段階を踏まなければなりません。
(ブログ「契約解除の内容証明」もご参考に)

いくら家賃を滞納していても、
勝手に家財道具を撤去して
次の人に貸すというような行為は
「自力救済の禁止」に該当して
法律上、認められません。

では、まずは家賃の催促ですが、
賃借人が行方不明の場合はどうなるでしょうか。

意思表示の公示送達


その場合は意思表示の公示送達を行います。
裁判所に申し立てて、家賃の催促していることを
裁判所と市町村役場に掲示してもらい、
掲示した日から2週間経過すると、賃借人に
家賃催促の意思表示が到達したものとみなされます。

それでも家賃の支払いがなければ
次は契約解除の意思表示を相手しなければなりません。
もう一度、意思表示の公示送達が必要でしょうか。

解除の意思表示と明け渡し訴訟


解除の意思表示をしても、相手は行方不明ですから
当然、部屋を明け渡してもらえません。そうすると、
明け渡しを求める民事訴訟を提起する必要があります。
その訴状の中で契約を解除する旨を書いて、
訴状の送達で、解除の意思表示の到達とします。
裁判と解除の意思表示の公示送達を
まとめてやってしまうイメージです。

もちろん、相手は行方不明ですから、
訴状自体も公示送達となります。
裁判所の掲示板に掲示して、
解除の意思表示も含め、
訴状が相手に届いたものとして裁判をすすめます。

明け渡し強制執行


勝訴判決を得て、確定しても
やはり勝手に家財道具を持ち出してはいけません。
最後は、明け渡しの強制執行を申し立てて、
執行官に行ってもらって、明け渡してもらいます。

結局
①家賃催促の意思表示を公示送達
②明け渡し訴訟(解除の意思表示を含む)
③明け渡し強制執行 と
裁判所で3段階の手続きをとる必要があります。

賃借人が行方不明だと、とても面倒ですが
一つ一つ手続きを踏んでいくしかありません。

北九州市門司区、小倉北区、小倉南区、戸畑区
若松区、八幡東区、八幡西区とその近郊で、
簡易裁判所での民事訴訟の代理、
地方裁判所、家庭裁判所への
民事、家事手続きの書類作成は
角田・本多司法書士合同事務所へご連絡ください。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2013.02.22更新

事務所ブログの記事が、前回で100個目となりました。
そこで、ブログ記事のタイトルを
カテゴリ別に一覧にしたページを新設しました。

左の「ブログ記事一覧」のボタンをクリックして、
「相続・遺言」「不動産関連」などのカテゴリをクリックすると、
それぞれのカテゴリに関する
ブログ記事のタイトル一覧が表示され、
記事にリンクできます。

また、「司法書士 本多寿之facebookページ」の「ノート」でも
同じブログ記事の一覧を掲載しています。

ブログ記事の検索にご利用ください。

今後とも、当事務所のホームページ、事務所ブログを
よろしくお願いいたします。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2013.02.15更新

※ 前回「信託財産である不動産の売買について1」のつづきです。



3 委託者の地位の移転



委託者は誰か?といっても
委託者は信託目録に記載されています。
しかし、記載されているのはほとんどの場合
当初の委託者です。
当初の委託者は当初の受益者であることがほとんどです。

信託が設定されて以降に、受益権が転々と売買されて、
現在の受益者が当初受益者でないことはよくあります。
そして、実際は、受益権の譲渡と合わせて、
委託者の地位の移転もされていることがほとんどです。

つまり、受益権と委託者の地位は一体のものとして譲渡・移転され、
前の受益者兼委託者は、信託契約から離脱しているのです。

しかし、受益権の売買が行われるたびに
信託目録の受益者は変更されていますが、
委託者は変更されず当初の委託者のままとなっています。

理由としては、
平成18年に信託法が改正されましたが、改正前の信託法には
委託者の地位の移転について規定がありませんでした。
実際は、受益権の売買と合わせて
委託者の地位の移転がされていたにもかかわらず、
明文の規定がないということで、
信託目録の委託者は変更しない取り扱いをしていた
ということのようです。

そして、信託法の改正後も、
受益権と委託者の地位の譲渡・移転という取引が行われた際、
受益者の変更登記は行っても
委託者の変更登記は行わないことがあっていたようです。

しかし、最近、福岡法務局から
委託者の地位の移転が行われている場合は
委託者の変更登記を要する
と見解が出されたと聞きました。
(先例等は確認できていません。)

インターネットで検索してみると
委託者の変更を要するかどうかが議論になっている、
委託者の変更登記を行った、といった
司法書士のブログの記事が見られます。

不動産登記法にも次の規定があります。
(信託の変更の登記の申請)
第103条  前二条に規定するもののほか、第97条第1項各号に
  掲げる登記事項について変更があったときは、受託者は、遅滞な
  く、信託の変更の登記を申請しなければならない。

97条1項各号とは、信託目録に登記すべき事項で
委託者の氏名または名称および氏名を含みます。

委託者の地位が移転しているにもかかわらず、
変更登記がなされていない信託財産についての登記手続きは
これまでと違って、前提として委託者の変更を要する
と、なる可能性が十分にあるので注意が必要です。


4 信託条項は法の規定を排除していないか


受益者兼委託者が信託の終了を決定するとして、
しかし、ひとつ疑問が残っています。
当事者の合意による信託の終了については
前述のとおり信託法164条に規定があり
信託条項で別段の定めも可能とされています。

もし、信託条項で
「本信託契約は、期間が満了するまで原則として解除されない。
ただし、本信託契約に定めるいずれかの事由が発生した場合は
期間満了前に本信託契約は終了する」と定めてあり、
その一方で、事前の通知なしで受託者と受益者で合意できる旨も
委託者と受益者の合意により終了できる旨も定めてない場合、
それでも、信託法の規定に戻って委託者と受益者の合意で終了できるのか、
信託条項の定めが、164条1項の規定を排除しているのではないか
という疑問が残ります。

もっとも、信託条項は、委託者、受託者、受益者の3者が
合意すれば変更が可能ですから、
実際の取引において、委託者兼受益者と受託者で合意すれば
なんでもOKと考えることもできるかもしれません。
それでも、厳密には、前提として信託条項の変更登記が必要でしょう・・・


関東や関西などの大都市圏では、
オフィスビルなどの信託の登記も多いと思います。
そのような登記にめったにお目にかからない
地方都市の司法書士である私の考えは、
もしかしたら的外れではと思いながらも、
2回に渡り信託の登記について考えたことをお話ししました。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2013.02.09更新

今回のお話は、信託といっても家族信託ではなく、
信託されているオフィスビルなど大型の物件を
売買する場合のお話で、専門家向けの内容です。


1 信託財産である不動産の売買の形態


信託財産である不動産について
最終的に買主がその不動産の所有権を取得する売買は
主に次の3つの形態が考えられます。
なお、信託条項に信託が終了すると信託財産は
受益者に帰属する旨の定めがあるものとします。

① 信託の目的に従って受託者が直接売却

不動産の処分を目的とする信託において、
目的に従いその不動産を売却すれば、
その不動産は信託財産ではなくなり、
買主はその不動産の所有権を取得することになります。



② 信託終了→受益者が売却

信託を終了させると、信託財産である不動産は受益者に帰属します。
(信託条項に定めがある場合)
受益者が不動産の所有者兼売主となり、
買主に対し売却します。



③ 受益権の売買→信託終了で所有権を取得

まず、受益権を受益者と買主の間で売買し、
買主が受益者となったところで信託を終了させれば
信託財産は受益者となった買主に帰属します。



①の形態は、収益物件の管理を目的とする信託が多いこと、
また、受託者である信託銀行などが
売主として瑕疵担保責任にを負うことになることなどから
あまり多くないと思われます。
また②の形態では、一旦受益者が所有権を取得することで、
受益者に登録免許税、不動産取得税の負担が生じます。
(不動産取得税の課税は受益者が当初委託者でない場合)

というわけで、実際はほとんど③の形態で売買が行われているようです。


2 合意による信託の終了


③の形態では、まず受益者と買主との間で受益権の売買を行い、
合意により信託を終了させて、買主に不動産を帰属させます。
通常はこれらを同日で行ってしまいます。

それでは、受益権の売買が行われた後、
どうやって、信託を終了させるのでしょうか。

信託の終了について、例えば
「受益者が受託者に対し、60日前に書面により通知することにより
いつでも自由に信託契約を解除することができる」
といった定めが信託条項にあることが多いようです。

しかし、③の形態では、買主は受益者となったその日に
信託を終了させるわけですから、
事前に受託者に通知して解除することはできません。

実際の取引では、受託者と受益者が
信託の合意解除の書面を取り交わしているようです。

しかし、合意による信託終了について、信託法は次のように定めています。
(委託者及び受益者の合意等による信託の終了)
第164条
 委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。
2  (略)
3  前二項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるとき
 は、その定めるところによる。
4  (略)
※ 信託の終了に遡及効がないため、
法では「解除」ではなく「終了」と規定しています。

信託条項の別段の定めで終了できないとなると
合意で終了させることになりますが、合意は
「委託者」と受益者で行うのであり、
「受託者」と受益者で行うのではありません。

では、「委託者」はいったい誰なんでしょう?

つづきは、次回
「信託財産である不動産の売買について2」へ。

投稿者: 司法書士 本多寿之

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