事務所ブログ

2012.10.27更新

前回「家族信託と税金1」からのつづき

③ 受益者が死亡した場合

信託に定めがなければ、受益者の死亡により、
受益権は受益者の相続人に相続され、
受益権を取得した相続人が受益者となります。

税制上は、受益権を相続して受益者となった相続人が、
死亡した受益者から信託財産そのものを相続したものとして
相続税の対象となります。




④ 受益者連続型信託の場合

「受益者Aが死亡した時は、Bが受益者になる。
Bが死亡した時は、Cが受益者に、Cが死亡した時は・・・」
と、受益者が死亡した時に次に受益権を引き継いで
受益者となる者を信託において定めている
「受益者連続型信託」の場合です。

(ブログ「受益者連続型信託」をご参照ください。)

例えば、受益者Aが死亡したことで、
信託の定めにより、Bが受益権を引き継ぎ受益者となったとき、
税制上は、AからBへ信託財産が「遺贈」されたものとして、
Bについて相続税の課税対象となります。

Bが死亡してCが受益者となれば、
BからCへ信託財産が「遺贈」されたものとして、
Cが死亡して・・・・と、以下同じです。

「遺贈」は通常、遺言により財産を特定の人に承継させるものですが、
この場合、遺言がなくても「遺贈」同様に考えます。




4 信託の終了時


① 終了時の受益者が財産を取得した場合

信託終了時の受益者と、
終了時の信託財産(残余財産)の取得者が同じ場合
税制上は、実質的な財産の移転はなかった考えますので、
課税はされません。




② 終了時の受益者以外の者が財産を取得した場合

信託終了時の受益者から、残余財産の取得者(帰属者)へ
財産の贈与があったものと考えて、
残余財産の取得者について、贈与税の対象となります。

(参考事例:ブログ「先祖代々の家と土地を妻→弟の長男と引き継がせるには」など)





これまで見てきた例では、税制上、
受益者が信託財産を所有しているものとして考えますので、
信託上の所有者である受託者には、
受託者の立場として課税はされません。


5 不動産取得税


信託財産が不動産だった場合、
信託終了時に不動産取得税が課税されます。
ただし、委託者=受益者で、信託設定中に委託者にも受託者にも変更がなく、
委託者が残余財産を取得したときは、不動産取得税は課税されません。

信託設定時に、受託者は不動産の所有者となりますが
受託者に不動産取得税は課税されません。




財産の管理・承継について、遺言・相続のご相談、
家族信託(民事信託・個人信託)の設計・契約・運営のご相談は
北九州市小倉の角田・本多司法書士合同事務所までご連絡ください。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2012.10.26更新

※ 家族信託の解説動画を作成しました!

 基本的なしくみと代表的な活用例4つの5本立てです。

 是非ご覧ください。

 家族信託の動画(YouTubeチャンネルに移動します。)

 

 

今回と次回は、家族信託の税金について
まとめてみたいと思います。

※ 最終的な税金の計算や申告は
税務署や税理士にご確認ください。

一般的な家族信託ですので
① 受益者がいること
② 受益証券が発行されていないこと
③ 当事者は個人であること(法人でないこと)
を前提としてお話をします。


1 受益者を基準に考えます(受益者等課税信託)

信託では、財産の所有者は受託者ですが、
税制上は、受益者が財産を所有しているものとして課税されます。
評価は財産の評価と同じと考えます。

※受益者以外でも、信託を変更する権限を有し、
 信託財産の給付を受けることとされている者も
 受益者とみなして課税します。

ですので例えば、信託財産が賃貸物件だった場合、
受益者がその賃貸物件を所有しているのと同様に、
家賃などの収益は受益者の収入として、
かかった費用は受益者の経費として計算し、課税されます。
実際に受益者が、受託者から配当を受け取ったかどうかは問いません。



ただし、信託した賃貸物件について
ある年度に経費が収益を上回り損失が生じた場合でも、
不動産所得において損失はなかったものとみなされるので、
受益者の他の所得との損益通算はできません。


2 信託の設定時


① 委託者=受益者の信託

税制上、もとの所有者だった委託者から
受益者が信託財産を取得したと考えますが、
委託者=受益者の信託の場合は
所有者が変わらないことになりますで、
信託の設定にともなう課税はありません。

(参考事例:ブログ「高齢の自分に代わって、財産を管理して欲しい」




② 委託者 ≠ 受益者の信託

税制上、受託者が信託財産を
委託者から取得したと考え課税されます。
正当な対価が支払われていないのであれば、
委託者から受益者へ、信託財産の贈与があったものとして
受益者に贈与税が課税されます。

(参考事例:ブログ「財産を贈与したい でも管理も続けたい2」




3 信託の設定中


① 受益権が贈与・譲渡された場合


受益権が贈与・譲渡された場合でも、
税制上は信託財産そのものが贈与・譲渡されたものと考えます。
正当な対価が支払われていないのであれば
新受益者に贈与税が課税されます。
正当な対価が支払われていれば、
旧受益者に譲渡所得税が課税されることがあります。




② 受託者が信託財産を譲渡した場合

受託者が信託財産を第三者(譲受人)に
売却したりした場合です。

所有権は受託者から譲受人に移りますが、
税制上は、受益者が譲受人に信託財産を譲渡したもの考えますので、
受益者に譲渡所得税が課税されることがあります。




続きは次回「家族信託と税金2」

投稿者: 司法書士 本多寿之

2012.10.18更新

今回は、一度成立した信託の内容を
変更することについてお話しします。

信託では原則として、委託者、受託者、受益者が
当事者として登場します。


信託を変更したいとき、誰が変更できるのでしょうか?


1 信託契約などに定めがある場合


信託契約などに定めがある場合は、その定めに従います。
例えば「委託者と受益者の合意で変更できる」と定めてあれば
受託者の合意がなくても、委託者と受益者の合意で
信託の変更ができます。


2 信託契約などに定めがない場合


信託契約などに定めがない場合は、
法律の規定に従います。(信託法419条)

① 原則 → 委託者、受託者、受益者の合意

② 信託の目的に反しないことが明らかな場合
     → 受託者と受益者の合意 (委託者に通知)

③ ②+受益者の利益に適合することが明らかな場合
     → 受託者  (委託者、受益者に通知)

④ 受託者の利害を害しないことが明らかな場合
     → 委託者と受益者 (受託者に通知)

⑤ ④+信託の目的に反しないことが明らかな場合
     → 受益者 (受託者に通知、受託者が委託者に通知)

少しややこしいですが、軽微な変更ならば、
3者が合意しなくても変更できる場合がありますが、
重要な変更は委託者、受託者、受益者の3者の合意がなければ、
信託の内容は変更できないと考えた方がよいと思います。


3 注意する点


3者がいつでも元気でいればよいのですが、
そのうちの一人が死亡した、認知症で判断能力が衰えた、
とういことになると、3者の合意ができず、もはや変更はできません。

途中でまったく変更ができなくなるのでは、
不測の事態に対応できませんので、
信託契約などで、3者のうち誰かが欠けても
変更できるように定めておくことも考えられます。

一方で、あまりに簡単に変更できるように定めると、
委託者の当初の願いが、理由もなく変えられる恐れもあります。

ブログ「当事者が死亡した場合」でもお話ししたように、
当事者が欠けた場合、後任をどうするのか、
信託を変更できなくしないためにはどうしたらよいのか、
かといって委託者の願いが簡単に変えられないようにするには
どうしておけばよいのか・・・など、いろいろなことを想定して、
信託契約内容などを決めておく必要があります。

信託は自由で柔軟な設計ができますが、
それがために、決めておくべきことが多いとも言えます。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2012.10.05更新

信託には遺言で始まる信託、
遺言の代わりになる信託、などがあります。
今日は、信託と遺言についてお話しします。


1 遺言による信託


信託は次の3つの方法によります。
① 委託者と受託者の契約
② 委託者の遺言
③ 委託者自身を受託者として信託をする意思表示(自己信託)

②の委託者の遺言による信託は、
委託者が信託の内容を定めた遺言を作成した後、
委託者が死亡して遺言の効力が生じたときに
信託の効力も生じる信託です。

自分が死んだらこの財産は、
息子を受託者として、妻Aを受益者として信託する・・・
などの内容を遺言にするということです。



ところで、「遺言信託」と称するものの中には、
本人の生存中に遺言を預かり保管して、
本人の死亡後は、遺言の内容を実施する
遺言執行者の職務を行うことを指すものもあります。

これはあくまで遺言の保管と遺言執行であり、
受託者が財産を預かり、受益者が利益を受け取るという
信託法でいう法律上の「信託」とは異なります。
(「信託」を一般的な意味で使っているということで、
もちろん適法で問題ありません。)

ですので、このブログでは区別する意味で、
遺言による信託法上の信託を「遺言による信託」と呼びます。


2 遺言代用信託


「遺言代用信託」はその名のとおり
遺言の代わりとなる信託です。

1①の委託者と受託者の契約の中で、
最初の受益者は委託者、
委託者が死亡したらAが受益者となる
などと定めておくと、委託者の死亡により
妻Aが信託財産から利益を受けることができる、
つまり、委託者が死んだら妻Aがこの財産を相続する
などと遺言したのと同様の効果が生じます。
(所有権は受託者にあります。)




3 成年後見制度、通常の遺言と遺言代用信託の関係


成年後見制度では、
財産の所有者が生きている間の財産管理はできますが、
死亡すると終了します。

通常の遺言は、財産の所有者の死亡時における
財産の承継について指定できますが、
死亡するまで(生前)は効力が発生せず、
死亡後の財産の管理・承継について指定はできません。

しかし、遺言代用信託であれば、
生前、死亡時、死亡後に至るまで信託の効力を継続することができ、
その間の財産の管理・承継について決めることができます。


遺言、成年後見の各制度では実現できない部分を
信託で補うことが可能となります。

※ 遺言による信託も遺言代用信託も
 委託者が死亡した時点で、
 受益者が信託財産を遺贈または生前贈与で取得したものとして
 遺留分減殺の対象となることは、通常の遺言と同じです。





財産の管理・承継について、遺言・相続のご相談、
家族信託(民事信託・個人信託)の設計・契約・運営のご相談は
北九州市小倉の角田・本多司法書士合同事務所までご連絡ください。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2012.10.01更新

信託では「委託者」「受託者」「受益者」が当事者といえます。
(信託についてはブログ「信託のしくみ
信託の小まとめ」もご覧ください。)

今日は、それらの当事者が死亡した場合のお話です。



1 すべてに共通すること


法律の原則をお話ししていきますが、
その前に、どの当事者が死亡した場合も、
信託契約などで、その当事者が死亡したら
次に当事者になる人を決めておくなど、
信託に定めがあればそれに従います。

法律の原則と違うことを望むのであれば、
信託契約などにそのことを決めておく必要があります。


2 委託者が死亡した場合


委託者が死亡した場合は、その相続人が委託者となります。
(委託者の地位を相続により承継します。)

ただし、遺言により信託をした場合は、
委託者の地位は相続人に承継されません。

つまり、委託者がいないこととなります。


3 受託者が死亡した場合


受託者が死亡した場合は、次の受託者を選ぶ必要があります。
信託で選び方を定めていればその方法で、
定めてなければ委託者と受益者の合意で選びます。
必要ならば裁判所に申し立て選んでもらいます。

受託者が死亡して1年間、受託者が選ばれなければ、
信託は強制的に終了します。

受託者の相続人は、受託者の地位を承継しませんが、
次の受託者が選ばれるまで、
信託財産を管理しなければなりません。


4 受益者が死亡した場合


受益者が死亡した場合は、相続人が受益者となります。
(受益権を相続することで受益者となります。)
信託契約などに定めがなければ、
通常の遺産と同じように、遺産分割協議で取得者を決める、
受益者が生前に遺言で相続する人を指定することができます。


5 注意する点


いずれも信託契約などに定めがない場合・・・
信託契約を変更するには、原則として
委託者、受託者、受益者の合意が必要です。
信託を終了させるには委託者と受益者の合意が必要です。
また、3のとおり、受託者は委託者と受益者の合意で選びます。

2から4でお話ししたように
受益者は相続人に承継されるとして、
遺言でされた信託では委託者が存在せず、
受託者が死亡すると、選ばれるまで受託者不在となります。

委託者や受託者が欠けると、
信託の変更、合意での終了ができない、
次の受託者を選任できず、信託が強制的に終了してしまう、
といったことが起こりかねません。

これを防ぐには、
最初に信託をする段階でいろいろなことを想定して、
例えば、受託者が死亡したときの次の受託者を指定しておく、
委託者と受益者だけで信託を変更できるようにしておく、
遺言による信託でも委託者を指定して欠けないようにしておくなど
実情に合わせて必要なことを定めておく必要があります。

誰が先に亡くなるかは、誰にもわかりません。
いろいろなケースを考えると、たくさんのケースが考えられて
信託で定めることがとても多くなることもありますが、
信託の目的が達成できるよう
最初にいろいろなことを想定して
信託の内容を決定することが重要です。

投稿者: 司法書士 本多寿之