事務所ブログ

2018.01.11更新

信託財産、特に信託口口座に対する強制執行について

以前から疑問な点を持っていましたが、

私と同様の疑問・考えをお持ちの方を知りました。

その方のブログ記事を紹介しつつ、

司法書士の実務としての強制執行や訴訟手続きから見た

私の考えも述べたいと思います。

 

※ 司法書士 谷口 毅 先生「民事信託・家族信託の徹底活用!」

 2017年10月28日付記事「信託口口座と差押

 

信託財産に対する強制執行

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まず前提として、信託財産に対する強制執行については

信託法23条に規定があります。

 

〇 信託法第23条(信託財産に属する財産に対する強制執行等の制限等)

第1項

信託財産責任負担債務に係る債権(略)に基づく場合を除き、信託財産に属する

財産に対しては、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売

(略)... をすることができない。

第5項

第1項又は第2項の規定に違反してされた強制執行、仮差押え、仮処分又は担保権の実行

若しくは競売に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。

この場合においては、民事執行法(略)第38条及び民事保全法(略)第45条の規定を準用する。

※ 民事執行法第38条は第三者異議の訴えに関する規定 

 

信託財産責任負担債務については信託法21条に規定がありますが

谷口先生の記事では、信託財産に属する不動産について受託者が権限に基づき

業者に発注して修繕をした場合の、業者に対する代金支払い債務を

例としています。この債務は信託法21条1項5号

「信託財産のためにした行為であって受託者の権限に属するものによって生じた権利」

にかかる債務に該当する典型例の一つだと考えられます。

(この債務を業者側から見て「債権A]とします。)

 

信託財産に差押えなど強制執行ができるのは

信託財産責任負担債務にかかる債権に基づく場合であり、

受託者が信託財産とは無関係に負担した債務、例えば、

受託者が同じ業者に自分の自宅の修繕を発注した場合で

受託者が業者に対して負担した代金支払い債務、

業者側から見れば受託者に対する債権(「債権B」とします。)に基づいて

業者は受託者の固有財産に対する強制執行はもちろんできますが

信託財産に対する強制執行は(信託行為に定めがない限り)できません。

(「信託財産の独立性」として説明されることがあります。)

 

 

信託口口座に対する差押え

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上の例で、受託者が債権Aについても債権Bについても支払いをしないので

業者がそれぞれの債権について支払いを求めて訴訟を提起し、

それぞれ勝訴判決を得て判決が確定したとします。

 

業者はそれぞれの確定判決を債務名義として

受託者の甲銀行乙支店の預金の差押えを申立てたとします。

そして、甲銀行乙支店には、上の例の信託財産に属する信託口口座と

受託者の固有財産に属する預金口座があったとします。

 

まず、債権Aに基づいて差押命令が発令された場合、

責任限定信託の場合は信託口口座のみが、

責任限定信託でない場合は信託口口座と受託者固有の預金口座の

両方が差押えの対象となります。

 

また、債権Bに基づいて差押命令が発令された場合、

受託者固有の預金口座のみが差押えの対象となります。

 

しかし、銀行には債務名義は送達されず、送達される差押命令正本の請求債権目録には 

債務名義として「〇〇裁判所平成〇年(〇)第〇〇号事件判決正本」とのみ表示され、

その他は元金や利息の金額のみが表示されるため、銀行に債権の内容はわかりません。

 

また、差押債権目録にも「債務者(この場合は受託者)が第三債務者甲銀行乙支店に

有する預金債権・・・」と抽象的に表示され、信託財産に属する預金か否かは表示されないのが

通常の取り扱いと思われます。(複数の口座があった場合、「定期預金、定期積金・・・」

「口座番号の若い順」など差押えの順序の指定はされます。)

 

そうすると上の例で、銀行は送達された差押命令正本の表示から、

差押の対象となる預金口座が、信託口口座のみか、受託者固有の預金口座のみか、

またはその両方かを判別することは不可能です。

 

谷口先生は、受託者が同じで委託者が異なる複数の信託口口座があった場合も

例として挙げていますが、同様に差押命令正本にはそもそも信託に関する情報は

表示されていませんので、どの信託口口座に対する差押えか、やはり判別が不可能で

先生が疑問に思われているとおりだと思います。

 

銀行が差押命令正本の送達後、本来、差押の対象とすべき口座について

受託者の請求に応じて払い出しをしてしまうと、

債務者に対する弁済の禁止に反し、銀行が第三債務者として責任を問われかねません。

 

結局、銀行はどの口座を差押の対象とすべきか判別できない以上、

指定された順序で口座を差押の対象として、その結果、信託口口座が

対象となった場合は受託者の払い出しには応じず(口座をロック)、

もし、信託財産責任負担債務にかかる債権に基づく強制執行でないのであれば

当事者間で信託法23条5項に基づいて、裁判所で第三者異議の訴えで争ってください

という対応を取らざるを得ないのではないか・・・と思われます。

 

第三者異議の訴えにおいて、預金口座が信託口口座となっているという事実は

預金が信託財産に属しているということを証明する有力な証拠となるでしょうから

信託口口座を開設して金銭を管理することは、やはり有益であるとは考えられます。

 

しかし、信託に無関係な強制執行を銀行側で遮断できるかという点についは、

上記のとおり疑問が残ります。

 

以上の私の考えは、谷口先生が記事に書かれたお考えと同じと思われます。

 

※ 谷口先生にはブログ記事のご紹介・引用についてご快諾いただきました。

ありがとうございました。

 

次回は、強制執行の前提として取得する債務名義について

私なりに検討したことを述べたいと思います。

 

投稿者: 司法書士 本多寿之

2018.01.04更新

※ このページでは、判断能力が低下して成年後見人の支援が必要な

成年被後見人、または、信託で財産を託する委託者を「本人」と呼びます。

 

ブログ「家族信託の動画「②認知症対策」の解説」でも触れましたが、

成年後見制度は本人の権利と財産を「守る」制度であり、

それがために、「財産を凍結される」(実際は凍結しません)

「窮屈だ」と感じる人が多いのも事実ですが、「守る」ことに徹するのは、

本人の判断能力が十分でない以上、当然のことだと思います。

 

それに対して家族信託は、柔軟な設計が可能で、

財産も凍結されないことがメリットだと対比されることが多いです。

 

成年後見と家族信託は正反対のもののように言われ、

確かにそういう側面もあるかもしれません。

しかし、両者の根底にある考え方は同じだと思っています。

 

 

成年後見制度の「自己決定権の尊重」

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まず大前提として、成年後見制度は本人のための制度であり

成年後見人や親族を利するための制度ではないのは当然です。

 

そして、成年後見制度の重要な基本理念に「自己決定権の尊重」があり、

民法858条にも本人の「意思を尊重」と規定されています。

 

「判断能力が低下した人が自己決定?」と思う人もいるかもしれませんが、

 重い障害や疾患があっても、それでもなお本人には能力や意思は残っており、

その能力を活用して本人が自己決定した意思は尊重されるべきという理念です。

 

本人保護との調和が求められる場面もありますが、

どこで暮らしたい、こんな医療が受けたいといった本人の決定を

成年後見人は最大限、尊重してその職務を行わなければなりません。

 

成年後見制度はもっぱら本人のための制度であり

本人の意思決定は尊重されなければならない・・・

 

 

家族信託と「自己決定権」 

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※ ここからは私見が多く含まれます。

 

信託は誰のためのものかというと、「受益者」のためのものであり

受託者がその立場で、信託財産から利益を受けることが

禁止されている(信託法8条)ことからもわかるように

受託者を利するためのものではありません。

 

そして、家族信託は委託者=受益者でスタートすることが多いと思います。

 

契約による信託は、委託者と受託者間の契約で成立しますが、

ここで最大限、尊重されるべきは後に受益者となる委託者本人の意思だと思います。

 

成年後見制度において、判断能力の低下した本人、しかし、自己決定した意思は尊重されるべき、

ならば、家族信託において、判断能力の十分な委託者本人の意思が尊重されるのは当然です。

そういう意味で、成年後見と家族信託の根底にある考えは同じと考えます。

 

信託契約の内容によっては、委託者がないがしろにされ、

受託者や他の家族ばかりに都合がよく利益を得られるような

しくみになることもあり得ます。

 

委託者の意思を尊重しない、そして受益者のためにならない信託は

信託というしくみが存在する目的に反したものだと思います。

 

もっとも、成年後見との大きな違いとして、

例えば委託者の自宅を対象財産とした信託で、委託者が

「場所が良くないから、〇百万円でも売れるときに売ってしまいなさい」と、

成年後見であれば裁判所が許可することが難しい低額での売却を可能な契約内容にする・・・

 

受託者が財産の管理処分をしやすいように、残された家族がスムースに財産を承継できるようにと、

委託者本人以外の者にも有益な内容を含めるといった柔軟な設計が、信託では可能です。

 

これは、信託は契約時に、委託者本人に十分な判断能力があることが前提であり

委託者が自由な意思決定のもとで行うからこそ可能となることです。

 

家族信託は成年後見と比べて、柔軟な財産の管理処分が可能ですが、

両者とも、財産を管理してもらう「本人」のためのものであり

「本人」の自己決定を尊重するという根底にある考えは同じだと思っています。

 

 

 

 

 

投稿者: 司法書士 本多寿之

2017.09.30更新

家族信託の動画「②認知症対策~自宅売却に備えて」

(YouTubeサイトに移動します。)

 動画②認知症対策

  

動画でも解説していますが、

認知症などで判断能力(意思能力)を

欠いた人のした契約は無効となります。

 

判断能力がなくなってからできることは

家庭裁判所に成年後見人を選任してもらうことです。

(以下、財産管理などをしてもらう人を「ご本人」と呼びます)

 

1 成年後見制度

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成年後見制度は、判断能力を欠いたり衰えたりした人の

権利や財産を守るための重要な制度です。

高齢化社会の日本においてなくてはならない役割を果たしています。

 

その一方で、支出は必要最小限に、リスクは避けて、

財産を減らさないようにと、言わば「守り」に徹する傾向があります。

これは、ご本人が十分に意思を表示できない以上、仕方ない

ある意味、当然のことでもあります。

 

それがゆえに、「成年後見人が付くと、財産が凍結される」

(実際は凍結されません)と感じたり、

最近は司法書士・弁護士などの第三者が後見人に

選任されるケースが増えていますが、抵抗を感じる人もいます。

 

また、自宅の売却も、売却の必要性があり金額も妥当と

後見人が判断した上で、さらに、家庭裁判所の許可が必要で

親族の思うとおりにならないこともあります。

 

繰り返しになりますが、このような取り扱いはご本人の意思を確認できない以上、

当然であり、これが適切な運用だと思います。

きっと、ご本人が元気なら「誰も住まないならさっさと売りなさい」

と、言ってくれたに違いないとしても・・・

 

2 ご本人に判断能力があるうちなら

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ご本人に判断能力があるうちなら、財産をこのように管理してほしい、

処分してほしいという考えや想いなどの意思を表示して

それを実現できる方法が考えられます。

 

その方法の一つが「任意後見制度」です。

裁判所に選任してもらう「法定後見」に対し、

「任意後見」は「自分に判断能力がなくなったら、

この人に後見人になってほしい」と「この人」と

公正証書で「任意後見契約」を結ぶことで成り立ちます。

 

契約ですので両者が合意すれば、どこまで任せるとか、

どのように財産を管理・処分してもらうかなど

比較的自由に決めておくことができます。

自宅の売却も権限を与えれば、裁判所の許可は不要です。

 

ただし、後見人として財産管理等ができるのは、

本人の判断能力がなくなって、家庭裁判所が監督人を選任してからです。

後見人となってからは監督人の監督下に置かれ、

裁判所が監督人から報告を受けますから、

結局、後見人は間接的に裁判所の監督下に置かれます。

 

監督人には司法書士、弁護士などの専門職が就任しますので、

ご本人の財産から報酬を支払う必要があります。

 

そして、別の方法の一つが「家族信託」です。

動画でも解説しているように、信託する財産は受託者名義になりますので

受託者に管理・処分の権限を与えておけば、

ご本人に判断能力があってもなくても後見人が選任されていても

受託者自身が売主となり、権限に従って自宅の売却ができます。

 

動画②認知症対策

 

3 それぞれ異なる点や特徴

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このように、後見制度はご本人の判断能力がなくなってから

後見人として財産管理等を開始できるのに対し、

信託であれば、受託者は即、財産の管理等を始められます。

(任意後見の場合、任意代理の委任契約を併用して対応することもあります。)

 

信託で管理・処分の対象となるのは信託した財産に限られ、

その後、取得した年金などの金銭や財産は

新たに信託財産に組み入れなければ、受託者は管理できません。

(ご本人が「信託財産に組み入れる」と意思を表示できる判断能力が必要です)

また、信託財産と関係のない契約をご本人の代理人として結ぶこともできません。

 

これに対し、法定後見の後見人はもちろん、

任意後見の後見人も契約で定めた権限内であれば、

後見人に就任した後にご本人が取得した財産の管理処分や、

さまざまな契約行為もできます。

 

後見人は直接的・間接的に裁判所の監督下に置かれますが、

信託の受託者を監督するのは受益者です。

(信託契約で信託監督人を置くことは可能です。)

 

これらそれぞれを、いい点と考えるか、悪い点と考えるかは

ご本人の考えや状況によると思います。

 

すぐに財産管理を全面的に任せたいか、

誰が監督することを望むかなど・・・

 

一部の財産は信託で売却をし易くておいて、

その他の財産の管理や将来の契約に備えて

任意後見契約も結んで両者を併用するなど・・・

 

ご本人に判断能力があるうちであれば、

ご本人の考えや状況に応じて、

家族信託や任意後見などでの対策を検討することが可能です。

 

その他の動画(YouTubeサイトに移動します)

 

 ホームページ「家族信託」のページもご覧ください。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2016.11.06更新

10月22日(土)北九州市戸畑区の

ウエル戸畑で開催された

日本FP協会福岡支部様主催の

継続教育研修会で講師を務めました。

 

成年後見制度と家族信託について

約3時間お話をさせていただきました。

 

 研修資料1

 

今回の研修会では

長めのお時間をいただきましたので

今までのセミナーでご紹介できなかった

内容をプラスしてお話しできました。

 

この研修会でお話したことをピックアップして

ブログの次回以降でご紹介したいと思います。

 

 

 

投稿者: 司法書士 本多寿之

2015.04.06更新

昨日(4月5日)の朝日新聞の第1面に
成年後見に関する記事が載っていました。

新聞記事では、判断能力が衰えて
成年後見人が必要にもかかわらず
親族がいない、あるいは
親族が申し立てをしてくれない人について
市区町村長が申し立てることができることを
主に取り上げていました。

そして、自治体によって温度差がある、
つまり、申し立てに積極な自治体と
そうとは言えない自治体があることも
紹介されていました。

裁判所のホームページ(外部リンク)でも
成年後見に関する統計が公開されています。
こちらは、今日現在、平成25年までの統計ですが、
全体の申立件数はほぼ横ばい、
市区町村長申し立てが増えているといった
新聞で紹介された傾向は
ここ数年の傾向であることがわかります。

そして、新聞には紹介されていませんが
一つの傾向として
親族以外の者(第三者)が後見人に
選ばれる割合の増加があります。

第三者後見人の割合
平成22年 41.4%
平成23年 44.4%
平成24年 51.5%
平成25年 57.8%

制度がスタートした平成12年は
親族の後見人の割合が90%を
超えていたことと比べると
大きな変化と言えると思います。

そして、平成25年の第三者後見人は
司法書士 7,594件
弁護士  5,870件
社会福祉士 3,332件 などとなっており
司法書士が後見人となる件数が
一番多くなっています。

司法書士が、全国的に、積極的に
成年後見に取り組んできたことの
一つの表れだと思います。

新聞にも掲載されたように
成年後見人が必要な高齢者の
権利や財産が守られるよう
市区町村長申し立ても含めて
制度の周知がまだまだ必要と感じました。

また、その役目を私たち司法書士も
さらに担っていく必要があると思いました。




投稿者: 司法書士 本多寿之

2015.03.20更新

以前、時効で権利が消滅する
消滅時効については
ブログ「時効(消滅)について」でお話ししました。

今日は、時効で権利を取得する
取得時効についてお話しします。


1 取得時効の要件


権利を取得する・・・
取得する「権利」でイメージしやすいのは
「時効で物や不動産が自分のもの(所有)になる」
やはり「所有権」だと思います。

民法162条に規定があります。
「・・・所有の意志をもって、平穏かつ公然と
他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。」

① 所有の意志をもって・・・占有

「占有」とは自分の支配下におくというイメージです。
取得時効が完成するためには
「所有の意志」をもった占有でなければなりません。

ですから、他人の所有権を認めながら占有しても
時効にはなりません。
例えば、賃貸のアパートを借りた場合、
借主はアパートの部屋を占有しますが、
自分の所有として占有するのではありませんから、
何年借り続けても、アパートは借主の所有にはなりません。

② 期間
民法162条はさらに
占有のはじめに、他人の所有であることについて
知らない(善意)かつ、知らないことにつき無過失なら
10年間占有を継続すると、所有権を取得する

善意かつ無過失以外のときは
20年間占有を継続すると、所有権を取得する
と規定しています。

知っていたかどうかは、占有のはじめの時点が基準で
その後、知った(悪意)となっても影響はありません。

10年間または20年間、占有を継続することが必要です。
途中で占有を失った場合は、
その後、再び占有を開始しても、期間のカウントは0に戻ります。

(「時効の中断」によってもカウントは0に戻りますが
ブログ「時効(消滅)について」をご参照ください。)


まとめると
・占有のはじめに
  善意かつ無過失なら10年間
  それ以外の場合は20年間
・他人の物を所有の意志をもって
・占有を継続する
これらを満たして取得時効が完成します。

しかし所有権を取得するには「援用」が必要です。


2 援用と注意点


援用が必要なことは消滅時効と共通です。
(ブログ「時効(消滅)について」もご覧ください。)

「時効が完成したので、自分が所有者です!」
ということを主張する必要があります。
この主張をして初めて所有権を取得します。

注意が必要なのは、時効を援用しても
自動的に名義は変更にならないということです。

特に不動産であれば法務局での手続きが必要となります。
しかも、時効だからといって
登記簿上の所有者抜きで手続きはできません。

登記簿上の所有者に必要な書類を提出してもらうか、
書類を提出してくれなければ
裁判所の民事訴訟で、取得時効の主張をして
登記簿上の所有者へ所有移転登記手続きをせよと命じる
確定判決を得る必要があります。

自分が所有者でなくなるというのに
はいはいと書類を出して協力してくれる人は
通常はいないでしょうから、
取得時効で所有権移転登記をするには
民事訴訟が必要となることが多いということです。

さらに、時効完成後に、その不動産について
第三者に売買・贈与などで所有権移転登記がされると
その第三者には時効で取得したことを対抗(主張)できなくなります。

時効で自動的に名義は変わらない、
そのままにしていると時効を主張できなくなることがある
ということに注意が必要です。


北九州市門司区、小倉北区、小倉南区、戸畑区、
若松区、八幡東区、八幡西区とその近郊で、
不動産登記、所有権移転名義変更については
角田・本多司法書士合同事務所へご連絡ください。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2014.09.05更新

認知症などで判断能力お衰えた場合で
その方の財産を処分などするには
裁判所で成年後見人などを選任してもらう必要が
あることを以前お話ししました。

判断能力が衰えてから、裁判所に後見人を
選んでもらう後見を「法定後見」といいます。

これに対して、判断能力があるうちに
判断能力が衰えてたら、この人に
後見人になってもらうという契約をすることもできます。
これを「任意後見」と言います。


1 任意後見契約の締結


自分(本人)が将来判断能力が衰えたとき
自分が選んだ人に後見人になってほしい、
そんなときはその人と「任意後見契約」を結べば
判断能力が衰えたときに、その契約の内容に従って、
後見人とし財産管理などをしてもらうことができます。

契約ですから財産管理などを頼む人と
頼まれる人(後見人になる人)との合意が必要ですが
必ず公正証書で契約書を作成しなければなりません。



契約には、生活、療養看護または財産管理に関する
法律行為について、後見人にどの範囲まで代理権を与えるか
そういうことが盛り込まれます。

任意後見契約では、本人が自分の意志で後見人を選び
自分の意志で後見人に任せる範囲を決めることができます。


2 いつから後見人になるのか


契約をしても、本人に判断能力がある間は
後見人となる予定の人は、あくまで予定者であって
まだ後見人ではありません。(任意後見受任者)

本人が財産管理などを行います。

本人の判断能力が衰えたとき、
裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てて
任意後見監督人が選任されたときに
初めて任意後見契約の効力が生じて
予定者が任意後見人となります。


以後、任意後見人は監督人の監督のもとで
本人の財産管理などを行ってきます。


3 特徴


このように、任意後見はあらかじめ
本人の意思で後見人や代理してもらう範囲を
決めることができる点で法定後見と異なります。

元気なうちに将来に備えた「転ばぬ先の杖」・・・
以前、任意後見についての研修を受けたときの
講師だった公証人の言葉です。

本人の意思を反映することができる制度ですから
任意後見契約で居住用資産の処分の代理権が
与えられれば、法定後見のように裁判所の許可なしで
居住用資産の処分ができます。

法定後見では難しい単純な贈与なども
契約に盛り込んでおけば可能でしょう。
(無制限にという訳にはいきませんので相手や範囲、
時期などを明確にする必要があると思います。)

もちろん本人のための制度ですから、
任意後見人は任意後見契約に基づいて
本人のために財産管理などを行わなければなりません。


判断能力が衰えてしまうと
もはや自分の意志を実現することは難しくなります。
ご自分の財産管理にお考えや希望があるのであれば
任意後見を「転ばぬ先の杖」として活用することを
考えられてもいいと思います。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2014.06.24更新

今回は成年後見制度について
3つの類型についてお話しします。

1 3つの類型~後見・保佐・補助


成年後見には本人の判断能力の程度によって
後見・保佐・補助の3つの類型があります。

それぞれで、契約、遺産分割などの法律行為について
本人のみでできること、
後見人などの関与が必要なことに違いがあります。

※ 後見制度3類型のイメージ



後見→保佐→補助の順で、
本人の判断能力は高く
本人のみでできる法律行為の範囲も広くなります。


 後 見


「精神上の障害により事理を弁識する能力(≒判断能力)を欠く常況にある者」
                                            (民法7条)
本人が常に判断能力を欠く状態にあるような場合、
後見人が選任されます。
後見人は本人の代理人としてすべての法律行為を行います。
本人の行った契約などの法律行為は、取り消すことができます。


つまり、本人のみでは完全に有効な契約などはできないことになります。
(日常生活に関する行為は取消しができません。)


② 保 佐


「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者」
                                    (民法11条)
本人の判断能力が著しく不十分であるような場合、
保佐人が選任されます。
本人は、民法13条1項に規定された重要な法律行為をするとき
保佐人の同意が必要となります。
同意のない行為は、取り消すことができます。


その他、裁判所は特定の法律行為について
保佐人に代理権を与えることができます。(民法876条の4)

※ 民法13条1項(保佐人の同意を要する行為等)
一  元本を領収し、又は利用すること。
二  借財又は保証をすること。
三  不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
四  訴訟行為をすること。
五  贈与、和解又は仲裁合意をすること。
六  相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
七  贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は
  負担付遺贈を承認すること。
八  新築、改築、増築又は大修繕をすること。
九  第602条に定める期間を超える賃貸借をすること。

これらの重要な法律行為は、保佐人の同意が必要ですが
それ以外については、本人のみで有効にできる部分が
あるということになります。


③ 補 助


「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者」(民法15条)

本人の判断能力が不十分であるような場合は
補助人が選任されます。
本人は、民法13条1項に定めた行為の内
裁判所が決めた一部の行為をするとき
補助人の同意が必要となります。


その他、裁判所は特定の法律行為について
補助人に代理権を与えることができます。(民法876条の9)

補助人が選任された場合、
保佐人が選任されたときと比べて
本人のみで法律行為を有効にできる範囲が大きくなります。


2 手続きについて


成年後見、保佐、補助のいずれの手続きも
本人、配偶者、四親等内の親族などが
家庭裁判所に申し立てて行います。
(保佐、補助には本人の同意が必要な手続きがあります。)

申し立てには医師の診断書が必要となります。
診断書:福岡家庭裁判所のホームページより)
裁判所は、申立書や診断書の内容、申立人などからの聞き取り、
鑑定などから総合的に判断して
後見、保佐、補助の開始(または申立却下)の審判をします。


3 注意すべき点


申立時点で、後見人などの候補者を立てるのが通常です。
しかし、必ず候補者が後見人などに選任されるとは限りません。
司法書士、弁護士などの第三者が選任されることもあります。

売買や遺産分割をきっかけに
成年後見制度を利用することが多いと思いますが、
売買や遺産分割が完了して目的が達成できても
原則、本人が死亡するまで、後見人の業務は続きます。


裁判所などの監督下に置かれるため
必ずしも後見人の思ったとおりに
財産の処分や管理ができるとは限りません。

成年後見制度はあくまで本人のための制度だからです

成年後見制度の利用は、
いろいろなことをよく検討した上で行わなければ
後で「こんなはずではなかった」ということになりかねません。


投稿者: 司法書士 本多寿之

2013.11.28更新

最近、更新がなかなかできず、申し訳ありません。
それにもかかわらず、
多くの方にこのホームページをご覧いただいています。
ありがとうございます。

最近の検索を見ると、
「第三債務者」を含むキーワードで検索して
このホームページを訪れた方が非常に多くなっています。

これは今年5月2日のブログ
「従業員が給料を差押えられたとき~債権差押えの第三債務者」
検索されたためだと思います。

確かに裁判所から届く差押命令に
自分が「第三債務者」と書かれていると
「自分は差押えされるような未払いはないのに?」と
思うかもしれません。

これは債権差押えの手続きでの言葉の決まりです。



ある債権者が
貸金を返済しない債務者の給料を差押えた場合で考えると
その債務者(従業員)と雇い主との関係は
従業員が債権者、雇い主が債務者で
従業員が雇い主に対して給与債権を有していることになります。
(差押えられるのはこの給与債権になります。)

つまり、
貸金の債権者       - 貸金の債務者(従業員)
給与の債権者(従業員) - 給与の債務者(雇い主)
という、2つの債権債務関係がある訳です。

そして、給与差押え手続きの債権者・債務者は
あくまで貸金債権の債権者・債務者ですので
給与の債務者(雇い主は)これと区別して「第三債務者」と呼びます。
「債務者」と付いてしまいますが
未払いをしている差押え手続きの債務者とは区別されているのです。

それでもいきなり裁判所から差押命令が届いて
自分が第三「債務者」と書かれていると驚いて
「?! どうしたらいいのだろう」と思うかもしれません。

そのときの対応については、ブログ
「従業員が給料を差押えられたとき~債権差押えの第三債務者」
お話ししていますが、
供託など具体的な対応で困ったときは、ご相談ください。


北九州市八幡西区、八幡東区、若松区、戸畑区、
小倉北区、小倉南区、門司区とその近郊で
債権差押え、供託などのご相談は、当事務所へご連絡ください。


投稿者: 司法書士 本多寿之

2013.07.02更新

ここ数か月、当事務所のホームページを
「裁判所 書類 受け取らない」
「特別送達 本人以外 受け取る」などのキーワードで
検索してご覧いただいている方が多いようです。

ブログ「裁判所からの書類は受け取らなければ怖くない?」で
裁判所からの書類を受け取らないことで
不利益はあっても利益はほとんどないとお話ししました。
今日は、補足説明を加えてみたいと思います。


1 家族・従業員が受け取った場合


訴状、裁判の呼出状などは
裁判所から「特別送達」という郵便で送られてきます。
書留郵便に似た郵便で、不在だからといって
ポストにそのまま入れるようなことはありません。
不在通知を置いていきますので、
郵便局に電話して配達を依頼することができます。

送る場所は次のとおりです。(民事訴訟法103条)
1 受け取る者の住所(法人なら営業所・事務所など)
2 1がわからない、支障がある場合は就業場所
つまり、自宅で受け取らないと、
勤め先に送ってくることもあり得るということです。

送った場所で受け取るべき者がいない場合、
1の場合、そこにいる同居人、従業員などに
2の場合、そこにいる従業員などに渡すことができます。
なお、上の2の場合は従業員などが受け取りを拒まない場合です。
上の1の場合は、拒まれてもそこに置いていくことができます。

同居人、従業員が受け取った場合、
自宅などで受け取りを拒まれて置いていった場合、
いずれも本人が受け取ったのと同じように裁判は進みます。

ですから、本人でない家族・従業員などが受け取ったときは
早急に本人に裁判所からの書類を本人に渡す必要があります。



2 注意すべき点


受け取らないことで不利になることが多いのですから、
裁判所から特別送達が届いて
受け取るべき本人がいない場合でも、
家族や従業員は受け取って本人に渡すべきでしょう。

しかし、もうそこには住んでいない、
もうそこには勤めていないような場合は、
「ここにはいません」と受け取りを拒否するべきでしょう。
特に、以前の勤め先の従業員が受け取ってしまって
本人から「なぜ、勤めていないのに受け取ったんだ。」と
言われると困ると思います。

もっとも、そこには住んでいないが、
本人はどこかに隠れていて、郵便はとどかない状況
しかし、家族は連絡がとれるという場合は
受け取って本人に知らた方がよいかもしれません。

いずれにしろ、本人が裁判を起こされていることを知り、
訴状の内容を確認することが大切です。



なお、そこに住んでいる、勤めているのに
受け取らなかった場合でも
「書留郵便に付する送達」により、
発送した時に受け取ったものとみなして
裁判は進んでいきます。
(ブログ「裁判所からの書類は受け取らなければ怖くない?」)

投稿者: 司法書士 本多寿之

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