事務所ブログ

2013.03.13更新

賃貸アパート・マンションの大家、
つまり所有者が変わった場合、
賃借人はそのまま住み続けることができるか
ということについて考えてみます。

借家権の対抗


住み続けることができるかどうかは、
新しい所有者に対して、
自分は住み続ける権利があるんだと言える、
つまり借家権を主張(対抗)できるかどうかで決まります。

これについは、借地借家法に規定があります。
(建物賃貸借の対抗力等)
第31条  建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。

借家人は、建物の引渡しを受ければ、
その後に物権を取得した者に借家権を主張できます。
住んでいれば当然、引渡しを受けたことになります。
早く自分の権利を主張(対抗)できる要件を
備えた者が優先する、そういったイメージです。


アパート・マンションが売買された場合


そうすると、借りているアパート・マンションが売買され、
所有者が変わったとしても、
先に引渡しを受けている賃借人は
新しい所有者に自分の借家権を主張できる、
つまり、住み続けることができます。

自分の借家権とは、借りて住み続ける権利のみならず、
家賃や敷金など、賃貸借契約の内容全部を含みます。
新しい所有者が当然に家賃を値上げできる
ということはありません。

もっとも、経済事情の変動や近隣と比較して
不相当となったなどの理由で値上げの請求ができるのは
所有者が変わっても変わらなくても同じです。
(ブログ「家主が家賃を上げると言ってきました。」参照)


アパート・マンションが競売された場合


では、アパート・マンションが競売されて
所有者が変わった場合も同じでしょうか。
考え方は同じです。
しかし、競売の場合は、住んでいる人の借家権より
先に対抗できる要件を備えている権利、
つまり優先する権利があることが多いと思います。
その権利とは抵当権などの担保権です。

アパートやマンションを建てた、
または買ったことで所有者になった人が、
その資金を銀行などから借りたことで、
担保としてアパートやマンションに
抵当権が設定されることは多いと思います。

抵当権も「物権」であり、登記することで
第三者に対抗できる要件を備えます。
そして、その後、アパートを借りた人の借家権は
抵当権に遅れる権利となってしまいます。

もっとも、所有者が銀行に返済していれば、
抵当権者である銀行が、
「自分の方が優先しますから出て行ってください。」
なんてことは言えません。
しかし、返済が滞ると、銀行は裁判所に競売の申し立てができます。

競売でアパート・マンションの所有者となった人は、
抵当権に遅れる権利は引き継ぎません。
つまり、抵当権が設定された後に借家人となった人は、
競売で新しく所有者となった人にも自分の借家権を主張できない、
つまり、「出ていけ!」と言われたら、
出ていかないといけないのです!

(6か月の猶予はあります。)

一方、抵当権が設定される前から住んでいる借家人は、
自分の賃借権を主張(対抗)できますので、
競売の後もそのまま住み続けることができます。



実際は、賃貸アパート・マンションを競売で買う人は、
やはり賃貸目的のことが多いでしょうから、
家賃を払ってくれれば、そのまま住んでいいですよと
なることが多いとは思います。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2013.03.03更新

アパートやマンションを賃貸していたところ、
賃借人が数か月分、家賃を滞納したので
催促に行ったところ、部屋にはいない、
すでに数か月前から部屋には帰っておらず、
行方不明になっていた、
ということはあり得る話です。

家主としては、早く次の人に貸したいところですが、
勝手に家財道具を撤去して、
次の人に貸してもよいのでしょうか?

賃貸借契約が解除されるなどして終了しない限り
賃借人は部屋を使用(占有)することができます。
家賃を滞納していても同じです。

賃借人に部屋の明け渡しを求めるのであれば、
契約を解除し、賃貸借を終了させなければなりません。

家賃滞納を理由として解除するときは、
原則として、まず家賃の支払いを催促して
それでも払わなければ解除、という
2段階を踏まなければなりません。
(ブログ「契約解除の内容証明」もご参考に)

いくら家賃を滞納していても、
勝手に家財道具を撤去して
次の人に貸すというような行為は
「自力救済の禁止」に該当して
法律上、認められません。

では、まずは家賃の催促ですが、
賃借人が行方不明の場合はどうなるでしょうか。

意思表示の公示送達


その場合は意思表示の公示送達を行います。
裁判所に申し立てて、家賃の催促していることを
裁判所と市町村役場に掲示してもらい、
掲示した日から2週間経過すると、賃借人に
家賃催促の意思表示が到達したものとみなされます。

それでも家賃の支払いがなければ
次は契約解除の意思表示を相手しなければなりません。
もう一度、意思表示の公示送達が必要でしょうか。

解除の意思表示と明け渡し訴訟


解除の意思表示をしても、相手は行方不明ですから
当然、部屋を明け渡してもらえません。そうすると、
明け渡しを求める民事訴訟を提起する必要があります。
その訴状の中で契約を解除する旨を書いて、
訴状の送達で、解除の意思表示の到達とします。
裁判と解除の意思表示の公示送達を
まとめてやってしまうイメージです。

もちろん、相手は行方不明ですから、
訴状自体も公示送達となります。
裁判所の掲示板に掲示して、
解除の意思表示も含め、
訴状が相手に届いたものとして裁判をすすめます。

明け渡し強制執行


勝訴判決を得て、確定しても
やはり勝手に家財道具を持ち出してはいけません。
最後は、明け渡しの強制執行を申し立てて、
執行官に行ってもらって、明け渡してもらいます。

結局
①家賃催促の意思表示を公示送達
②明け渡し訴訟(解除の意思表示を含む)
③明け渡し強制執行 と
裁判所で3段階の手続きをとる必要があります。

賃借人が行方不明だと、とても面倒ですが
一つ一つ手続きを踏んでいくしかありません。

北九州市門司区、小倉北区、小倉南区、戸畑区
若松区、八幡東区、八幡西区とその近郊で、
簡易裁判所での民事訴訟の代理、
地方裁判所、家庭裁判所への
民事、家事手続きの書類作成は
角田・本多司法書士合同事務所へご連絡ください。

投稿者: 司法書士 本多寿之