事務所ブログ

2012.07.24更新

前回、登記を先にして「対抗要件」を
備えた方が勝ちとお話ししましたが、
今回、もう少し詳しく。
登記の効力である「対抗力」は重要で、
登記のことを勉強したことがある人なら、
とても有名な話であります。

民法の177条には次の規定があります。
「不動産に関する物権の得喪および変更は・・・
その登記をしなければ第三者に対抗できない。」

「物権」とは所有権、抵当権など不動産に対する権利です。
「物権の得喪」とは、「売買などで所有権を得た」
「ローン完済で抵当権は消滅した」など、
不動産に対する権利を得たり、消滅したりすることです。

「登記をしなければ第三者に対抗できない」とは
不動産を買って所有権を得たならば、
売買の当事者以外の第三者に、
「自分が所有者だ」と主張できないという意味合いです。
(売買の売主には登記していなくても自分が所有者だと主張できます。
当然といえば当然ですが。)

例をあげて考えてみます。
ある土地があって、所有者がAだったとします。
AはBと土地の売買契約を結び、BはAに代金を支払いました。
その後、AはCとも同じ土地について売買契約を結び、
CはAに代金を支払いました。
(同じ物について二重に売買契約をすることは認められています。)

そして、Aは土地をB名義にする前に、C名義にしてしまいました。

BはCより先に、売買契約を結び、代金も支払っています。
しかし、B名義に登記をしていないため
第三者であるCに「自分がこの土地の所有者だ」と主張できません。
一方、Cは自分名義に登記をしていますから、
Bに対しても誰に対しても「自分が所有者だ」と主張できます。



Bは登記をしていなかったため、
第三者に対抗できる所有権は取得できません。
第三者に「私が所有者だ」と言えないのなら、
実質的に所有権を取得していないのと同じといえます。
もちろん、BはAに対して代金の返還や、
損害があればその賠償を請求できます。
しかし、そんな場合、Aがお金を持って逃げている、
他の支払いなどにあててAにはもうお金がない、
などのことが起こったりするものです。

「不動産の売買に司法書士が立ち合う訳」でお話ししたとおり
売買代金を支払ったら、
司法書士はすぐに登記手続きに入ります。
これは、代金の支払いと名義変更を同時に行うことで、
取引の安全をはかるとともに、
少しでも早く登記をして、
「対抗力」を備えることで買主の権利を守ることになります。
言い換えれば、他の第三者に、
先に登記をされることを防ぐことになります。

所有権が移った、抵当権が消滅したなど、
不動産の権利について変動があったときは、
速やかに登記手続きをすることが大切です。


北九州市門司区、小倉北区、小倉南区、
戸畑区、若松区、八幡東区、八幡西区と
その近郊で、不動産の贈与、売買、相続、
抵当権の設定、抹消などの登記手続きは、
角田・本多司法書士合同事務所にご依頼ください。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2012.07.16更新

前回の続きで、共有となった不動産のお話です。

前回の例で、ある土地を
Aが5分の2、Bが5分の2、
Cが5分の1の持分割合で共有していたとします。

各共有者はいつでも共有状態の解消(共有物の分割)を
請求できます。(民法256条)
共有者全員で分割の方法を協議するわけですが、
分割の方法は次の3つの方法があります。

1 現物分割
その名のとおり、共有物そのものを分割します。
例でいえば、土地を5分の2、5分の2、5分の1の
面積割合で切り分ける(分筆する)といった方法です。

しかし、建物であれば3つに切り分けるわけにはいきません。
今回は不動産の共有をテーマにしていますが、
不動産以外で切り分けられないものは色々あります。

2 価格賠償
例でいえば、Aが土地を単独で取得する代わりに、
土地の価格の5分の2をBに、5分の1をCに
金銭で支払う方法です。(全面的価格賠償)

また、現物分割であっても、1人だけが角地だったり、
南向きで日当たりが良かったりと、
持分割合に合わせて分割するとが難しい場合があります。
そんなとき、分割によって不利になった人が、
有利になった人から、その有利・不利の差を
金銭で補ってもらうという価格賠償もあります。
(部分的価格賠償)

3 代金分割
どうやっても公平に分割できそうにないとき、
土地を売ってしまって、代金を持分の割合に応じて分ける方法です。

どのような方法で分割するか、
価格賠償をする場合、いくら支払うのかなどは、
共有者全員が合意すれば、協議が成立したとして
それで決まりです。

しかし、協議が成立しない場合、
共有者は裁判所に共有物分割訴訟を提起することができます。
(民法258条)
裁判所が共有不動産の分割方法を決めることになります。
裁判所は現物分割ができない場合や、分割により
価格が著しく減少するおそれがある場合、
共有物を競売にかけて、その代金を分割することがあります。

ところで、共有物分割にともない、
土地や建物について、ある共有者の持分を、
他の共有者に移転する登記手続きについて、
ある一定の場合、通常より登録免許税の税率が低く設定されています。
どういう場合かの説明は、今回は割愛しますが、
税率が低く設定されているのは、「売れない」「貸せない」かもしれない
共有状態の解消を促す意図もあると思います。

共有者はいつでも分割を請求できるという規定があり、
共有物分割訴訟が準備されているのも同様の意図だと思います。

「意図」は法律や税制の意図・・・つまり国の意図だと思います。
国が解消を促す共有状態。
遺産分割などで、共有にしようと思う前に、
もう一度、考えられてもいいのではないでしょうか。


北九州市八幡西区、八幡東区、若松区、
戸畑区、小倉北区、小倉南区、戸畑区で
不動産の相続、遺産分割、売買、贈与などによる
所有権移転登記、住宅ローン借り換えによる
抵当権設定・抹消登記などの不動産登記は、
角田・本多司法書士合同事務所にご依頼ください。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2012.07.13更新

今日は、不動産を数人の共同名義(共有)にした場合のお話です。

たとえば、ある土地を
Aが5分の2、Bが5分の2、
Cが5分の1の持分割合で共有していたとします。

そんなとき、例えばAさんから、
「私の5分の2は、土地のどこからどこまでですか?」と聞かれることがあります。
以前、「通行権の確保~道路の話2」でも触れましたが、 
3人で共有しているのは、土地の「所有権」と考えた方が分かりやすいでしょう。

所有権は土地全体におよびますので、
3人で何か取決め(協議)をしていない限り、
持分割合に応じて、3人とも土地全体を使うことができます。

「持分割合に応じて」とは、
例えば、使用する回数や時間がその割合によるということです。
とは言っても、共有の私道で、持分割合が全員同じ場合でも、
通る頻度は共有者によって差があるはずです。
では、何度も通る人は、そのうち通れなくなるかというと、
道路は同時に複数の人が通ることができるはずで、
自分の通行が他の人の通行を妨げない(他の人も通れる)のであれば、
実質的に持分割合に制約されないとも考えられます。

持分割合が問題となるのは、
共有者で不動産の使用方法について取決め(協議)をする場合です。
これは共有不動産の「管理」にあたるとされ、
過半数割合の過半数で決定します。
先ほどの例では、ABCの誰もが1人で過半数の持分を持っていないので、
使用方法を協議するときは2人以上が賛成しないと決まりません。

そして、例えば共有の山林を伐採する、
共有土地を売却するなどの行為は、共有不動産の「変更」にあたり、
共有者全員の同意がなければすることができません。
売却したとき、代金は持分割合に応じて分配されると考えられますが、
売却自体には全員の同意が必要です。

共有不動産を貸す行為は、「管理」か「変更」かで説が分かれていて、
必ずしも定かではありませんが、
トラブルを避けるためには、全員で同意して行うのが好ましいでしょう。

このように、共有不動産には様々な制約があります。
一人でも反対すると、売ることもできません。
(貸すこともできない可能性があります。)
使用方法でもめることもあるかもしれません。

私道、団地内の公園、地元の人たちが共同で使う山林、
夫婦が共同で出資して購入したマイホームなど、
共有にしておかなければならない場合を除いて、
不動産を共有することは、デメリットが多く、
好ましい状態とは言えないと思います。

不動産が共有になるきっかけは色々あるのでしょうが、
よくあるのはやはり相続でしょう。

相続人が3人いて、遺産分割協議がなかなかまとまらない。
しょうがないので3人が3分の1ずつの共有にした・・・などの場合です。
親子で共有、兄弟で共有ならまだしも、
年月が経ち、その子たちの共有、さらにその孫たちの共有・・・
そうなると、共有者の人数は増え、お互いに疎遠になっていきがちです。
共有者の過半数が「売ろう!」と言っても売れません。
大抵その不動産は、元の共有者のうちの一人の子孫が使っていたりします。
共有者の子孫の一人が権利を主張して使用方法についてもめるかもしれません。

相続での遺産分割で共有にすることは
できるだけ避けた方が良いと思います。

共有となってしまった不動産の
共有状態を解消する方法はあるのでしょうか?
続きは次回にお話しします。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2012.07.03更新

前回と関連して賃貸借と供託のお話です。

前々回、借家人が死亡した場合、
借家権は借家人の相続人に承継されるとお話ししました。

それでは、家主が死亡した場合はどうなるでしょうか。
家主=借家の所有者ですが、借家の所有権は、
死亡した家主の相続人に承継されます。
そうすると、家主の地位も相続人に承継され、
賃貸借契約はそのまま続くことになります。

すぐに相続後の新しい家主(所有者)がわかれば、
その人に家賃を払えばいいのですが、
家主の相続人が誰か、全くわからないということもあり得ます。
わからなければ家賃を払えないから、
払わなくていいのでしょうか?

前回、家主が家賃の受け取りを拒否した場合、
そのままだと家賃不払いになる(契約解除の理由になる)恐れがあり、
そのようなときの手当として
「供託」手続きがあるとお話ししました。

家主の相続人が全くわからないときも同じで、
そのまま払わなければ家賃不払いになる恐れがあります。
そのときも家賃を「供託」することで、
家賃不払いを避けることができます。

家賃の支払い、借金の返済などの債務の履行を弁済といい、
その供託を弁済供託といいます。
弁済供託をするには理由(供託原因)が必要です。
民法494条に規定があり次の3つのいずれかに該当する必要があります。
1受領拒否・・・例)大家が家賃の受け取りを拒んだ
 ※家賃を支払おうとすることが前提です。ただし、あらかじめ
  受け取らないことが明確な場合は、いきなり供託できることがあります。
                          (不受領意思明確)
2受領不能・・・例)大家が行方不明
3債権者不確知・・・例)大家の相続人がわからない

これらに該当しなければ弁済供託はできません。
また、支払期日に遅れて供託する場合は、
遅延損害金を付して供託しなければなりません。
「家賃は月5万円だけど、今月はお金がないから3万円供託」はできません。
契約通りの金額(本旨弁済)でなければ供託できません。
先払いの特約がない限り、
例えば6ヵ月先の家賃まで供託ということもできません。
毎月、期日までに家賃全額を持って行って、拒絶されたら供託・・・
と、これを繰り返さなければなりません。

しかし、受け取らないから、相続人がわからないからと、
供託もせずに放っておくと、後から契約解除の理由となりかねません。
少し面倒ですが、毎月供託するしかありません。

供託には、弁済供託のほかに、
宅建主任者などが行う営業保証供託、
裁判所の手続きで命じられる担保供託、
給料差し押さえで、給料を支払う雇用主が行う執行供託などがあります。

司法書士は、供託手続きについて代理人として
供託したい人に代わって手続きを行うことができます。

借金を期日に返そうとしたら、貸主が行方不明、
そのまま放っておくと、毎日、遅延利息が増えていってしまいます。
供託すれば借金を返済したことと同じですので、遅延利息は発生しません。

ですから、放っておかずに司法書士へご相談ください。

投稿者: 司法書士 本多寿之