事務所ブログ

2012.06.27更新

続けて賃貸借のお話です。

その前に、例えば土地の売買で代金を1000万円として
売主と買主が合意して契約が成立したとします。
ところが後になって売主が
「やっぱり1200万円に上げてください。」と言えるでしょうか。
法律上の「請求」としての、代金の値上げの「請求」はできません。
法律上の権利に基づいて、その行使としてできるのが「請求」で
合意して契約した売買代金について
売主に値上げを請求する権利はありません。
もちろん値交渉は構いません。買主がそれに合意すれば値上げも可能です。

その一方で、法律上の権利に基づいて「請求」をする場合は
相手の合意は不要です。

さて、賃貸借においても、契約時に「家賃1ヵ月5万円」と
合意が成立しています。
それを後から家主が値上げを「請求」することができるでしょうか。
売買と同じように一度合意したのですから値上げできなのでしょうか。
賃貸借は売買と違って継続的な契約です。
長い期間が経過すると、物価の上昇、経済情勢など様々な変化が生じます。

そこで、借地借家法32条1項は次のように規定しています。
「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、
土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、
又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、
契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の
増減を請求することができる。」

家主が経済事情や周りの状況から家賃が安すぎると思えば、
「家賃を値上げします!」と借家人に請求することがきる、
つまり、借家人の合意なしに家賃を値上げできるということです。

しかし、借家人にすると「デフレの時代で建物の価格は上がってない」
「周りと比べて安くない」など反論があるかもしれません。
それでも、値上げされた家賃を払わなければならないのでしょうか。

これについても借地借家法の32条2項に規定があります。
「建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、
その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、
相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。」

つまり、どうしても納得できないのなら、
裁判で値上げが認められるまで、
借家人が妥当と考える金額で家賃を払えばいい訳です。
今までの家賃が妥当と考えるなら、今までと同じ家賃を払えばいい訳です。
値上げした金額に足りないからと、家賃不払いにはなりません。

(裁判所を利用する場合、まずは調停手続で話し合いをし
それでもまとまらないとき裁判手続へと手続の順番が決まっています。)

ただし、裁判で値上げが認められた場合は、
それまで妥当と考え払った金額と値上げされた金額の差額を
1割増しして払わなければなりません。
「5万円に値上げします。」と言われた後も、
4万円が妥当だと考えて、6カ月間、月4万円払ってきて
しかし、裁判で5万円の値上げが認められた場合は、
(5万円-4万円)☓6カ月☓1.1=6万6000円を
不足分として払わなければなりません。(一度に)
そういうリスクも考えて家主と交渉しなければなりません。

とは言え、どう考えても納得のいかない値上げに対しては、
自分が妥当と思う家賃を支払いながら、
交渉し、さらに裁判になっていくこともあるかもしれません。

そんなとき、家主が「値上げした家賃でないとだめだ」と
妥当と思う家賃では受け取らないかもしれません。
「受け取らないならしょうがない」とそのまま3カ月、4カ月と経つと、
家賃不払いを理由に契約を解除される恐れがあります。
家主が受け取らないのに家賃不払いになるというのは
不合理に感じるかもしれませんが、
そういうときの手当として「供託(きょうたく)」というものがあります。

受け取りを拒絶する家主の代わりに、
法務局に自分が妥当と思う家賃を受け取ってもらうのが供託です。
法務局に供託しておけば家賃不払いにはなりません。

もっとも、家主が拒絶する間は毎月供託をしなければなりません。
少し面倒ですが仕方ありません。
また、家主が受け取りを拒絶して初めて供託ができます。
家主と顔を合わせるのが嫌だからと、
家主のところに家賃を持っていかないまま
拒絶されてもいないのに供託をすることはできません。

供託は私たち司法書士の取り扱う手続の一つです。
困ったときはご相談ください。

北九州市 門司区、小倉北区、小倉南区、戸畑区
若松区、八幡東区、八幡西区とその近郊で、
供託手続、民事裁判手続きや相談は、
角田・本多司法書士合同事務所へ




投稿者: 司法書士 本多寿之

2012.06.23更新

前回に関連して、賃貸借のお話です。

高齢化がすすんでいるためか、
「借家人が高齢で、借家も老朽化している。
借家人が死亡したら、賃貸借が終了させて
借家を取り壊せるようにしたい」という相談を数回受けました。

まず、借家人が死亡したとき、賃貸借契約はどうなるのでしょうか?
借家人が借家を借りる権利「借家権」は
借家人が死亡しても消滅せずその相続人に承継されます。
つまり、相続人が家賃を払って借り続けることができるのです。

家賃を払ってくれるのならばまだいいのですが、
相続人から何の反応もない場合はやっかいです。
「契約解除の内容証明郵便」でお話ししたように、
解除するには、まず家賃の催促(催告)をして、
支払いに必要と思われる期間が経過してから
解除すると内容証明郵便を送るなりする必要があります。

相続人が1人ではなく数名いる場合は、
解除の意思表示は全員にする必要があります。
(民法544条 解除の不可分性)
ですから、相続人全員に内容証明郵便なり送らなければなりません。

また、相続人の一人が解除に応じた場合
新たな借家人と賃貸借契約をすることができるでしょうか?。
解除は全員としなければなりませんので、
一人と合意で解除しても、賃貸借契約は終了していません。
なので、新たな借家人と賃貸借契約はできないことになります。

このような家主からするとやっかいな問題が起こりかねないので、
高齢の借家人を追い出すことはかわいそうだとして、
死亡したら賃貸借を終了させたい・・・
こんなんことを特約として契約に盛り込んでも有効でしょうか?

借地借家法に、建物の賃貸借について
家主からの更新の拒絶、解約の申し入れは
「正当な事由」がなければすることができず、
これに反する借家人に不利な特約は無効とされています。
(借地借家法28条・30条)

「借家人が死亡したら賃貸借は終了する」という特約は、
相続人に承継されるべき賃貸借を正当な事由もなく終了させる
借家人に不利なものと言わざるを得ず、無効と考えられます。
つまり、「死亡したら賃貸借終了」の特約は意味がないことになります。l

ところで、相談者から、この場合定期借家を使えないかと言われました。
定期借家は、定められた期間が経過したら更新しないとする借家契約です。
(借地借家法38条)
しかし、定期借家は「期間の定めがある建物の賃貸借」で
「1年間」「5年間」などが期間であって
「借家人が死亡するまで」は期間の定めではありません。
やはり、定期借家も使えないと考えられます。

とすると、借家人が高齢の場合、
死亡したとき、すぐに相続人と連絡をとり交渉ができるよう
どのような人が相続人になるのか、
どうやったら連絡をとれるのかなど、
あらかじめ確認しておくことが必要かもしれません・・・

投稿者: 司法書士 本多寿之

2012.06.20更新

相手にこちらの意思を伝える(意思表示)するにあたって、
内容証明郵便と普通のお手紙とで効力に差はない、
しかし、裁判で証拠としては内容証明の方が強いと、
以前、ブログに書きました。
(Q.内容証明郵便には特別な効力がありますか?)
手紙(内容証明郵便)で相手に
意思表示することが多いものの一つとして
賃貸借などの契約解除があると思います。

例えば、家主が
家賃を何度も滞納して、反省する様子もない、
現在も3ヵ月ほどたまっているので
借家人から借家を明け渡してほしいと考えたとします。

滞納していても、賃貸借契約がある限り
家主は借家を貸さなければなりません。
明け渡して欲しいなら、賃貸借契約を解除すること必要です。

ところで、賃貸借に限らず、
一方が契約を履行しない場合の解除について、民法に規定があります。

民法第541条(履行遅滞等による解除権)
「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、
相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、
その期間内に履行がないときは、
相手方は、契約の解除をすることができる。」
(相当の期間→通常債務を履行するに必要と考えらる期間)

※ 賃貸借のような継続的な契約については、
「信頼関係が破たんしている」ことが契約解除の条件に加わります。
例えば1回滞納しただけでは、「信頼関係が破たんしている」とは言えず
契約解除は認められないと考えられます。

借家の例で考えると、家主は
家賃を3ヵ月分滞納しているからと、すぐに解除できる訳でなく、
まずは、「家賃を2週間以内に払え」などど催告(催促)して、
それでも借家人が払わない場合に
賃貸借契約を解除できることになります。

つまり、催促→解除と2段階を踏まなければなりませんが、
ちょっとめんどくさく感じるかもしれません。

そんなときは、「家賃を2週間以内に払え。
さもなくば、2週間経過後に契約を解除する。」と
2段階をまとめて意思表示する、
まとめて内容証明郵便に書いて送ることも可能です。
2週間以内に滞納家賃を持って来なければ、
あらためて解除の通知を送らなくても契約は解除されます。

それでは、解除されたら大変と借家人が2週間以内に、あわてて
たまった家賃全額を持ってきたらどうなるでしょうか?
「その期間内に履行がないとき」解除ができるのであって、
家賃を持ってきた=履行があったのですから解除はできません。

最初に催促だけの内容証明郵便を送り、
2週間たっても滞納家賃を払わなかったので、
契約解除の内容証明郵便を送ったところ、
借家人があわてて滞納家賃全額を持ってきたときはどうなるでしょうか?

解除の内容証明郵便が借家人に届いたところで、
契約解除の効力は発生しています。
つまり、家賃を持ってきても賃貸借契約は終了しているのです。

契約を解除されても、借家人に滞納家賃を支払う義務はあります。
もし持ってきても滞納家賃として受け取って構いません。
それでも借家人は借家を明け渡さなくてはなりません。
滞納家賃を受け取っても、契約が復活したりしません。

契約解除の通知は、しっかり法律の条件(要件)を満たした上で、
証拠となるよう内容証明郵便で送ることが大切です。

投稿者: 司法書士 本多寿之