事務所ブログ

2018.01.04更新

※ このページでは、判断能力が低下して成年後見人の支援が必要な

成年被後見人、または、信託で財産を託する委託者を「本人」と呼びます。

 

ブログ「家族信託の動画「②認知症対策」の解説」でも触れましたが、

成年後見制度は本人の権利と財産を「守る」制度であり、

それがために、「財産を凍結される」(実際は凍結しません)

「窮屈だ」と感じる人が多いのも事実ですが、「守る」ことに徹するのは、

本人の判断能力が十分でない以上、当然のことだと思います。

 

それに対して家族信託は、柔軟な設計が可能で、

財産も凍結されないことがメリットだと対比されることが多いです。

 

成年後見と家族信託は正反対のもののように言われ、

確かにそういう側面もあるかもしれません。

しかし、両者の根底にある考え方は同じだと思っています。

 

 

成年後見制度の「自己決定権の尊重」

青い線

まず大前提として、成年後見制度は本人のための制度であり

成年後見人や親族を利するための制度ではないのは当然です。

 

そして、成年後見制度の重要な基本理念に「自己決定権の尊重」があり、

民法858条にも本人の「意思を尊重」と規定されています。

 

「判断能力が低下した人が自己決定?」と思う人もいるかもしれませんが、

 重い障害や疾患があっても、それでもなお本人には能力や意思は残っており、

その能力を活用して本人が自己決定した意思は尊重されるべきという理念です。

 

本人保護との調和が求められる場面もありますが、

どこで暮らしたい、こんな医療が受けたいといった本人の決定を

成年後見人は最大限、尊重してその職務を行わなければなりません。

 

成年後見制度はもっぱら本人のための制度であり

本人の意思決定は尊重されなければならない・・・

 

 

家族信託と「自己決定権」 

青い線

※ ここからは私見が多く含まれます。

 

信託は誰のためのものかというと、「受益者」のためのものであり

受託者がその立場で、信託財産から利益を受けることが

禁止されている(信託法8条)ことからもわかるように

受託者を利するためのものではありません。

 

そして、家族信託は委託者=受益者でスタートすることが多いと思います。

 

契約による信託は、委託者と受託者間の契約で成立しますが、

ここで最大限、尊重されるべきは後に受益者となる委託者本人の意思だと思います。

 

成年後見制度において、判断能力の低下した本人、しかし、自己決定した意思は尊重されるべき、

ならば、家族信託において、判断能力の十分な委託者本人の意思が尊重されるのは当然です。

そういう意味で、成年後見と家族信託の根底にある考えは同じと考えます。

 

信託契約の内容によっては、委託者がないがしろにされ、

受託者や他の家族ばかりに都合がよく利益を得られるような

しくみになることもあり得ます。

 

委託者の意思を尊重しない、そして受益者のためにならない信託は

信託というしくみが存在する目的に反したものだと思います。

 

もっとも、成年後見との大きな違いとして、

例えば委託者の自宅を対象財産とした信託で、委託者が

「場所が良くないから、〇百万円でも売れるときに売ってしまいなさい」と、

成年後見であれば裁判所が許可することが難しい低額での売却を可能な契約内容にする・・・

 

受託者が財産の管理処分をしやすいように、残された家族がスムースに財産を承継できるようにと、

委託者本人以外の者にも有益な内容を含めるといった柔軟な設計が、信託では可能です。

 

これは、信託は契約時に、委託者本人に十分な判断能力があることが前提であり

委託者が自由な意思決定のもとで行うからこそ可能となることです。

 

家族信託は成年後見と比べて、柔軟な財産の管理処分が可能ですが、

両者とも、財産を管理してもらう「本人」のためのものであり

「本人」の自己決定を尊重するという根底にある考えは同じだと思っています。

 

 

 

 

 

投稿者: 司法書士 本多寿之

2017.12.25更新

家族信託の動画「⑤自己信託~贈与後も財産管理~」

(YouTubeサイトに移動します。)

⑤自己信託

 

通常の「贈与」は、贈与の対象となった物に

担保が設定されているなどのことがない限り、

贈与を受けた者(受贈者)がその物について

何の制限もない所有権を取得します。

 

つまり、もらってしまえば、もらった者(受贈者)が

使おうが、捨てようが、売ろうが、好きにできます。

(排他的権利とも呼ばれます。)

 

最近、相続税対策などで贈与が注目されているようですが、

贈与も契約の一種で、あげる者(贈与者)ともらう者(受贈者)の

意思の合致によって成立します。

 

あげる方が一方的に「あげた」と言っても贈与は成立しません。

つまり、もらう方は当然、財産を贈与された事実を知っている、

財産が自分の所有となったことを知っているわけです。

 

自分の物になったから、自分の好きにします!

と、売ったり、使ったり、好きにしても誰も文句は言えません。

排他的権利である所有権はもらった者(受贈者)に移っているからです。

 

動画のように、株式の議決権の行使についても同じで、

息子は株を全部もらった以上、株主総会で社長である父の解任決議も可能です。 

 

 

自己信託(信託宣言)自己信託(信託宣言) 

青い線

そこで、「自己信託」を利用するのですが

自己信託は見方によっては不思議な信託で

委託者=受託者、つまり、見た目は財産の移動も

名義の変更もありません。

 

動画の例では、株を信託財産、父が委託者兼受託者、 

息子を受益者にしています。

 

信託では、譲渡税、贈与税、相続税については

受益者が財産を所有しているものとして

課税されます。(受益者等課税)

(※ ブログ「家族信託と税金」をご覧ください。)

 

ですので課税上は、信託によって株の所有は父から息子に移った、

つまり、株が父から息子に贈与されたとして取り扱われます。

 

しかし、父は受託者ですので、信託財産である株は

父が引き続き管理をすることになります。

そして、株の議決権行使は管理行為に含まれると考えられ

父が引き続き議決権の行使ができます。

(解任される心配がなくなります。)

 

課税上は株価の安いうちの贈与として取り扱われ、

肝心の議決権は父が握っておくことができるのです。

 

動画の④まででご紹介した信託は、

委託者と受託者の契約で成立するものでしたが、

自己信託は委託者=受託者ですので契約ではありません。

一人でするということで「信託宣言」とも呼ばれます。

 

そして、自己信託(信託宣言)は公正証書で行うのが原則です。

 

税金の世界には「名義株」「名義預金」という言葉があるそうです。

株やお金を贈与したと、名義だけ変えておいて、

実際はもらった方は知らない、つまり贈与契約は成立してない場合、

あげた方が死亡して相続税の調査をされたときに、

「名義株」「名義預金」は贈与が成立していないとして、

遺産に含まれる、相続税の対象となるということがあるそうです。

 

しかし、自己信託の場合、株や預金の名義は受託者、

つまり、あげた方のままです。

しかし、公正証書で日付と受益者がはっきりしますので、

相続税の調査があっても、信託を設定した時点での受益者への

贈与として取り扱われ、相続税の対象となりません。

(設定時、贈与税の対象にはなります。)

 

自分で自分に財産を託する自己信託・・・

少し不思議に思われるかもしれませんが

このような活用方法が考えられます。

 

※ その他の動画(YouTubeサイトに移動します) 

 

 

 

 

投稿者: 司法書士 本多寿之

2017.12.22更新

家族信託の動画「④共有状態解消」

(YouTubeサイトに移動します。)

家族信託の動画「④共有状態解消」

 

 

不動産の共有はおすすめできません

青い空

動画でもお話ししていますが、

財産、特に不動産の共有はおすすめできません。

(ブログ「不動産の共有」をご覧ください。)

 

不動産全体を売却する、

老朽化した建物を解体するなどの処分行為は、

共有者全員の同意が必要です。(民法251条)

 

※ 民法251条の「変更」には管理以外の

処分行為が含まれていると解されています。

 

共有状態が続くと、共有者が死亡して相続が発生し

例えば兄弟姉妹の共有 → いとこ同士の共有 → さらにその下・・・

と、疎遠な人同士の共有となり、人数も増えてきます。

そうすると、認知症の人や「争族」でもめている人が現れたりして

もはや全員の同意をとることは難しく

売るに売れない、壊すに壊せない不動産が生まれてしまいます。

 

※ 空き家問題の多くは、所有者が死亡してもそのまま放置され

相続人が子 → 孫 → ひ孫と代替わりして、実質的に多人数の共有状態となり、

全員の同意がとれないことが原因の一つとなっています。

 

そもそも賃貸不動産であれば、すぐに売ったり壊したりしないでしょう。

しかし、共有状態が続けば将来、トラブルが起きそうです・・・

 

 

「共有状態解消」信託

 青い線

そういうときでも、全員が同意できる時点であれば

家族信託でトラブルの予防が考えられます。

 

共有状態解消 

 

動画の例では、共有者の子どもの一人を受託者、

共有者全員を委託者兼受益者として

共有不動産を信託財産としています。

 

不動産の名義は受託者一人に一本化され

管理・処分の権限を与えておけば、

元共有者である委託者(受益者)の同意なしで

受託者が単独で売買などを行えます。

 

委託者(受益者)の一部が認知症になったり、相続でもめたりしても、

受託者が単独で売買などができることに影響はありません。

 

元共有者の受益者は信託契約の規定などに基づき、

代金・賃料の分配を受けることになります。 

 

受託者の一存で売却できるのに抵抗を感じるのであれば

例えば、売却には受益者(受益権)の過半数の賛成が必要などと

信託契約で定めることも可能です。

 

なお、受益者に対する金銭の分配は

現物の不動産そのものを分けるよりは簡単ですが、

受益者が増えると、認知症、争族、行方不明などの受益者が現れ

利益の分配に問題が発生するかもしれません。

 

そういった場合に受託者はどのように対応したらよいか

信託契約で規定しておけば、信託財産や受託者が無用なトラブルに

巻き込まれることを防げると考えられます。

 

※ もちろん、最初の時点でできるのであれば

共有を回避するのが最善の方法と思います。

 

ブログ「共有状態解消信託~研修会から~」 もご覧ください。

 

その他の動画(YouTubeサイトに移動します)

 

 

 

投稿者: 司法書士 本多寿之

2017.09.30更新

家族信託の動画「②認知症対策~自宅売却に備えて」

(YouTubeサイトに移動します。)

 動画②認知症対策

  

動画でも解説していますが、

認知症などで判断能力(意思能力)を

欠いた人のした契約は無効となります。

 

判断能力がなくなってからできることは

家庭裁判所に成年後見人を選任してもらうことです。

(以下、財産管理などをしてもらう人を「ご本人」と呼びます)

 

1 成年後見制度

青い線

 

成年後見制度は、判断能力を欠いたり衰えたりした人の

権利や財産を守るための重要な制度です。

高齢化社会の日本においてなくてはならない役割を果たしています。

 

その一方で、支出は必要最小限に、リスクは避けて、

財産を減らさないようにと、言わば「守り」に徹する傾向があります。

これは、ご本人が十分に意思を表示できない以上、仕方ない

ある意味、当然のことでもあります。

 

それがゆえに、「成年後見人が付くと、財産が凍結される」

(実際は凍結されません)と感じたり、

最近は司法書士・弁護士などの第三者が後見人に

選任されるケースが増えていますが、抵抗を感じる人もいます。

 

また、自宅の売却も、売却の必要性があり金額も妥当と

後見人が判断した上で、さらに、家庭裁判所の許可が必要で

親族の思うとおりにならないこともあります。

 

繰り返しになりますが、このような取り扱いはご本人の意思を確認できない以上、

当然であり、これが適切な運用だと思います。

きっと、ご本人が元気なら「誰も住まないならさっさと売りなさい」

と、言ってくれたに違いないとしても・・・

 

2 ご本人に判断能力があるうちなら

青い線

 

ご本人に判断能力があるうちなら、財産をこのように管理してほしい、

処分してほしいという考えや想いなどの意思を表示して

それを実現できる方法が考えられます。

 

その方法の一つが「任意後見制度」です。

裁判所に選任してもらう「法定後見」に対し、

「任意後見」は「自分に判断能力がなくなったら、

この人に後見人になってほしい」と「この人」と

公正証書で「任意後見契約」を結ぶことで成り立ちます。

 

契約ですので両者が合意すれば、どこまで任せるとか、

どのように財産を管理・処分してもらうかなど

比較的自由に決めておくことができます。

自宅の売却も権限を与えれば、裁判所の許可は不要です。

 

ただし、後見人として財産管理等ができるのは、

本人の判断能力がなくなって、家庭裁判所が監督人を選任してからです。

後見人となってからは監督人の監督下に置かれ、

裁判所が監督人から報告を受けますから、

結局、後見人は間接的に裁判所の監督下に置かれます。

 

監督人には司法書士、弁護士などの専門職が就任しますので、

ご本人の財産から報酬を支払う必要があります。

 

そして、別の方法の一つが「家族信託」です。

動画でも解説しているように、信託する財産は受託者名義になりますので

受託者に管理・処分の権限を与えておけば、

ご本人に判断能力があってもなくても後見人が選任されていても

受託者自身が売主となり、権限に従って自宅の売却ができます。

 

動画②認知症対策

 

3 それぞれ異なる点や特徴

青い線

 

このように、後見制度はご本人の判断能力がなくなってから

後見人として財産管理等を開始できるのに対し、

信託であれば、受託者は即、財産の管理等を始められます。

(任意後見の場合、任意代理の委任契約を併用して対応することもあります。)

 

信託で管理・処分の対象となるのは信託した財産に限られ、

その後、取得した年金などの金銭や財産は

新たに信託財産に組み入れなければ、受託者は管理できません。

(ご本人が「信託財産に組み入れる」と意思を表示できる判断能力が必要です)

また、信託財産と関係のない契約をご本人の代理人として結ぶこともできません。

 

これに対し、法定後見の後見人はもちろん、

任意後見の後見人も契約で定めた権限内であれば、

後見人に就任した後にご本人が取得した財産の管理処分や、

さまざまな契約行為もできます。

 

後見人は直接的・間接的に裁判所の監督下に置かれますが、

信託の受託者を監督するのは受益者です。

(信託契約で信託監督人を置くことは可能です。)

 

これらそれぞれを、いい点と考えるか、悪い点と考えるかは

ご本人の考えや状況によると思います。

 

すぐに財産管理を全面的に任せたいか、

誰が監督することを望むかなど・・・

 

一部の財産は信託で売却をし易くておいて、

その他の財産の管理や将来の契約に備えて

任意後見契約も結んで両者を併用するなど・・・

 

ご本人に判断能力があるうちであれば、

ご本人の考えや状況に応じて、

家族信託や任意後見などでの対策を検討することが可能です。

 

その他の動画(YouTubeサイトに移動します)

 

 ホームページ「家族信託」のページもご覧ください。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2017.09.30更新

※ 家族信託の動画「①基本的なしくみ」

(YouTubeサイトに移動します。)

 動画①基本的なしくみ 

 

動画で説明しているとおり

信託には委託者、受託者、受益者が登場します。

(ただし、一人二役ができる場合もあります。)

 

信託は主に委託者と受託者の契約で成立します。

(信託法3条2号、4条1項)

 

信託財産は受託者名義となりますが、

通常の「預ける」行為や「あげる」贈与などとは

下記のような異なる点があります。

 

① 受託者は信託の目的の達成のために

必要な権限を有します。信託契約で制限を

加えることも可能です。(信託法26条)

 ※ 受託者の好き勝手にできる訳ではありません。

 

② 受託者は受託者の立場で信託財産から利益を受けることはできません。

(利益享受の禁止 信託法7条)

 

③ その一方で、受益権を有する受益者が、信託財産から

利益の給付等を受けることができます。(信託法1条6項7項)

 

つまり、信託財産の見た目の所有者は受託者ですが

受託者は信託契約などに従い管理・処分する権限

(「義務」とも言えます)を有するのみで

財産から生じる利益は受益者が受けることになります。

 

このことから、

受益者が財産の実質的な所有者と言われたりします。

 

動画①基本的なしくみ

 

ところで、平成18年の信託法改正までは、

もっぱら信託銀行・信託会社などが受託者となる

「商事信託」が主でしたが、法律が全面的に見直され

整備されたことで、個人が受託者となる「民事信託」の

利用がし易くなりました。

 

 そして、家族や親族が受託者となって「家族信託」を活用することで

家族や親族内で財産の管理や承継を円滑に行い

トラブルを防ぐという活用もし易くなりました。

 

代表的な活用方法は、動画の②から⑤でご紹介しています。

その他の動画(YouTubeサイトに移動します)

 

※ 「家族信託」は一般社団法人法家族信託普及協会の登録商標です。

本ブログ著者は同協会の会員であり、同協会と同じ趣旨で「家族信託」

という言葉を使用しています。

 

ホームページ「家族信託」のページもご覧ください。

 

投稿者: 司法書士 本多寿之

2017.09.28更新

家族信託についての解説動画を作りました。

本多がフリップやスライドを使って解説します。

コンパクトにまとめて(1本あたり約3分~3分半)、

やわらかめの内容にしています。

 

信託の基本的なしくみの解説と、

代表的な活用方法4つを紹介した、計5本立てです。

(以下のリンクはYouTubeサイトに移動します)

① 基本的なしくみ

② 認知症対策

③ 受益者連続~遺言を超えて

④ 共有状態解消

⑤ 自己信託~贈与後も財産管理

 

また、それぞれの動画について

以下のブログでさらに詳しく解説しています。

(ブログは一部準備中です)

 

家族信託の動画「①基本的なしくみ」の解説

家族信託の動画「②認知症対策」の解説

家族信託の動画「③受益者連続信託」の解説

家族信託の動画「④共有状態解消」の解説

家族信託の動画「⑤自己信託」の解説

 

ホームページ「家族信託のページ」もご覧ください。

 

 

投稿者: 司法書士 本多寿之

2015.03.20更新

以前、時効で権利が消滅する
消滅時効については
ブログ「時効(消滅)について」でお話ししました。

今日は、時効で権利を取得する
取得時効についてお話しします。


1 取得時効の要件


権利を取得する・・・
取得する「権利」でイメージしやすいのは
「時効で物や不動産が自分のもの(所有)になる」
やはり「所有権」だと思います。

民法162条に規定があります。
「・・・所有の意志をもって、平穏かつ公然と
他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。」

① 所有の意志をもって・・・占有

「占有」とは自分の支配下におくというイメージです。
取得時効が完成するためには
「所有の意志」をもった占有でなければなりません。

ですから、他人の所有権を認めながら占有しても
時効にはなりません。
例えば、賃貸のアパートを借りた場合、
借主はアパートの部屋を占有しますが、
自分の所有として占有するのではありませんから、
何年借り続けても、アパートは借主の所有にはなりません。

② 期間
民法162条はさらに
占有のはじめに、他人の所有であることについて
知らない(善意)かつ、知らないことにつき無過失なら
10年間占有を継続すると、所有権を取得する

善意かつ無過失以外のときは
20年間占有を継続すると、所有権を取得する
と規定しています。

知っていたかどうかは、占有のはじめの時点が基準で
その後、知った(悪意)となっても影響はありません。

10年間または20年間、占有を継続することが必要です。
途中で占有を失った場合は、
その後、再び占有を開始しても、期間のカウントは0に戻ります。

(「時効の中断」によってもカウントは0に戻りますが
ブログ「時効(消滅)について」をご参照ください。)


まとめると
・占有のはじめに
  善意かつ無過失なら10年間
  それ以外の場合は20年間
・他人の物を所有の意志をもって
・占有を継続する
これらを満たして取得時効が完成します。

しかし所有権を取得するには「援用」が必要です。


2 援用と注意点


援用が必要なことは消滅時効と共通です。
(ブログ「時効(消滅)について」もご覧ください。)

「時効が完成したので、自分が所有者です!」
ということを主張する必要があります。
この主張をして初めて所有権を取得します。

注意が必要なのは、時効を援用しても
自動的に名義は変更にならないということです。

特に不動産であれば法務局での手続きが必要となります。
しかも、時効だからといって
登記簿上の所有者抜きで手続きはできません。

登記簿上の所有者に必要な書類を提出してもらうか、
書類を提出してくれなければ
裁判所の民事訴訟で、取得時効の主張をして
登記簿上の所有者へ所有移転登記手続きをせよと命じる
確定判決を得る必要があります。

自分が所有者でなくなるというのに
はいはいと書類を出して協力してくれる人は
通常はいないでしょうから、
取得時効で所有権移転登記をするには
民事訴訟が必要となることが多いということです。

さらに、時効完成後に、その不動産について
第三者に売買・贈与などで所有権移転登記がされると
その第三者には時効で取得したことを対抗(主張)できなくなります。

時効で自動的に名義は変わらない、
そのままにしていると時効を主張できなくなることがある
ということに注意が必要です。


北九州市門司区、小倉北区、小倉南区、戸畑区、
若松区、八幡東区、八幡西区とその近郊で、
不動産登記、所有権移転名義変更については
角田・本多司法書士合同事務所へご連絡ください。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2015.01.20更新

昨年、贈与を受けた方で、
相続時精算課税制度を利用する方、
婚姻20年以上経過した夫婦間の居住用不動産の
贈与の控除を利用される方は、
結果的に課税されない場合でも
今年は2月2日から3月16日までの間に
税務署に贈与税の申告をしなければなりません。

申告をしないと、これらの特例等は適用されず
年間110万円の控除しか受けられません。
ご注意ください。


※ 税金の申告、計算については
最寄りの税務署などにご確認ください。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2013.09.23更新

ある人が亡くなったとき
その人の遺産にはどんなものがあるのか、
どこにあるのか。
相続人が把握していないことも時々あります。

「不動産を持っていたことは聞いていたが
あちこちに持っていたので、どこにあるのか・・・」
そいうときに参考になるのが
固定資産税の納税通知書です。
毎年、4月から5月ごろに
不動産のある市町村から納税義務者に送られます。
(納税義務者は通常、不動産の所有者です。)

納税通知書には、土地の建物の所在や地番・家屋番号などの
明細が載っていることが多く、役に立ちます。

※ 土地や建物には、住所(住居表示番号)と異なる
地番・家屋番号が付けられていることがあります。

田や畑の農地や山林、原野などを持っていた、
公衆用の私道の共有持分を持っていた場合などでは
固定資産税の納税通知書に全部が載っていないこともあります。

農地や山林・原野などは評価額が低くなることがあり
一定の課税標準額以下の場合は課税されません。
公衆用道路は固定資産税が非課税のこともあります。
※ この他にも課税されない、非課税となることがあります。
固定資産税が課税されない不動産は
納税義務者に通知する必要がないため
納税通知書に載っていないのです。

しかし、課税されない不動産も市町村は把握している訳で、
さらに、市町村は所有者(納税義務者)ごとに不動産を把握しています。
つまり、誰がどの不動産を持っているか、人ごとにわかるのです。
これを一覧表まとめたものが「名寄帳」です。

所有者やその相続人であれば、
市町村から名寄帳を発行してもらうことができます。
名寄帳には、その人がどの不動産を持っていたか
課税されていないものも含めて一覧になっています。
                                                                                
ただし、その市町村にある不動産に限ります・・・

とても便利な名寄帳ですが、どこの市町村かは特定が必要です。
遺産が銀行預金、証券会社にある株式の場合、
市町村も把握していませんから
雲をつかむような話になりかねません。

相続人が困らないように
どこにどんな財産があるか
何らかの形で残しておいてあげてはいかがでしょうか。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2013.06.04更新

相続税の基礎控除が引下げらることとなり、
生前贈与が脚光を浴びているようです。
一般的な週刊誌にも贈与の特集がされたりしています。

しかし贈与については、相続税対策だけでなく
遺留分の請求に備えた贈与の相談を受けることがあります。

遺留分についてはブログ「遺留分の話」で触れていますが、
簡単に言うと、遺言などで遺産を全くもらえない、
少ししかもらえない相続人が一定の割合の主張ができる制度です。

ですので、生前に贈与しておいて、遺産からはずしておこう
ということで、生前贈与を考えるのです。
贈与した時の贈与税の問題はあるものの、
生前に贈与しておけば、死後遺留分を主張される心配がない・・・
しかしこれでは、遺留分の制度が骨抜きになってしまします。

「遺産」と書きましたが、遺留分の計算について民法1029条は
「・・・被相続人が相続開始の時において有した財産の価額に
その贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して・・・」
と規定しています。

つまり、死亡した時点で残っていた財産のみならず、
生前に贈与した財産も遺留分の計算の基礎となるのです。
やはり、抜け駆け的な贈与に一定の制限をしているのです。

もっとも、生前贈与がすべて遺留分の計算の基礎となる訳ではなく
民法1030条
「贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、
前条の規定によりその価額を算入する。
当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って
贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。」

つまり、死亡前一年間の生前贈与は無条件に
それ以前の贈与については、贈与する方・もらう方両方が
その贈与によって、遺留分権利者の遺留分を確保できなくなることを
知っていた場合、贈与した財産も加算して計算します。

では、遺留分対策の生前贈与は無意味でしょうか?
これは、遺言をするかどうかと同じことが言えます。

ブログ「遺留分の話」でも触れたように、
遺留分の主張は、贈与・遺言をした人が死亡したことと、
遺留分を主張できる贈与・遺言があることを
を知った日から1年以上経つとできなくなります。

知らなくても死亡から10年経つとできなくなります。

また、遺言も贈与も、その人の意志ですから、
それに反して遺留分を主張することに抵抗を感じて
遺留分の主張をしないかもしれません。

遺留分を主張する人の考え方次第ですが、
生前贈与も意味を持つこともあると思います。

同時に、遺言と同じく、生前贈与も
100%望みどおりになるとは限らないことも、
頭に置いておくべきだと思います。

投稿者: 司法書士 本多寿之

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