事務所ブログ

2013.05.24更新

差押えについては、昨年の4月から5月にかけて
このブログで何度かとりあげました。

今日は、差押える側でもなく、差押えられる側でもなく、
しかし、差押えの関係者となる
給与差し押さえの場合でいえば雇い主のお話です。


1 債権差押え


例えば
①従業員が雇い主から給料を支払ってもらう権利(給与債権)、
②預金を銀行から払い出してもらう権利、
③貸したお金を返してもらう権利、
こういった権利を債権といいます。
なので、これらのものを差押えると「債権差押え」となります。

差押えるのは債権であり、
①給料支払い前に雇い主が持っているお金、
②銀行の金庫にあるお金、
③お金を借りた人が持っているお金を差押えるのではりません。
これらの債権差押えの債務者は
①なら従業員、②なら預金している人、③ならお金を貸した人
ですので、①雇い主、②銀行、③お金を借りた人の財産は
差押えることができませんが、差押えの関係者と言えます。
(「第三債務者」といいます。)




2 第三債務者(雇い主)はどうすればいいか


従業員の給料が差押えられたとき
まず、雇い主のところに裁判所から差押え命令が届きます。
第三債務者である雇い主はどうすればいいのでしょうか。

これについては、民事執行法に規定があり、
第三債務者に対し債務者への弁済が禁止されます。(145条)
つまり、雇い主は従業員に給料を支払ってはならないことになります。
もっとも、給料の場合、差押えられるのは原則として4分の1まで
残りの4分の3は支払っていいことになります。
(この計算には例外もあります。152条)

もし、差押えられた給料を全部支払ったらどうなるでしょう。

裁判所からの差押命令が従業員(債務者)に送達されて
1週間が経過すると、差押えた人(債権者)は
雇い主(第三債務者)に対して
「給料の4分の1を直接自分に支払ってくれ」と言えます。
(債権者の取立て 155条)
そのとき雇い主は「給料全部を従業員に支払ったので、
あなたに支払いはできない」とは言えないのです。

裁判所から禁止されたにもかかわらず支払ったのですから
その責任は雇い主にあり、
雇い主は差押えた人(債権者)にも支払う
つまり、二重払いをしなければならなくなるのです。


2 差押えが重なった場合


1者だけでなく、2者以上の債権者が給料を差押えることで
給料差押えが重なった(競合)した場合は
どちらにどれだけ支払えばいいのか迷いそうです。

しかし差押えが重なった場合、債権者に直接支払うのではなく、
法務局に供託しなければなりません。(156条2項)
後は、裁判所が配当ということで債権者に分配します。

差押えが続く限り、毎月給料の支払いのときに、
4分の1を法務局に供託しなければなりません。

また、差押えが重ならない場合でも、
差押えから1週間たって債権者から「私に直接払え」と言われて
はたしてこの人に支払っていいのかと不安になるかもしれません。

差押えが重なっていない場合でも
法務局に供託することはできます。
(156条1項)
支払い(配当)は裁判所がしますので安心です。

なお、いずれの場合も供託した時は、
裁判所にそのことを届けなければなりません。(156条3項)




以上のことは、
家賃を差押えられたときの賃借人、
請負代金を差押えられたときの発注業者などでも
同じことが言えます。

対応を誤ると二重払いの危険があります。
また、供託手続きは司法書士が代理して行える業務ですので、
迷われたときは是非ご相談ください。






投稿者: 司法書士 本多寿之

2013.05.03更新

「時効で借金を返さなくてよくなった」
「時効で土地が他人のものになった」
「時効」という言葉を聞いたことがあると思いますが、
今回は、権利が消滅してしまう
「消滅時効」についてお話しします。


1 消滅時効


権利があるのに、長い期間、行使しなかったため
権利が消滅してしまう、それが消滅時効です。

例えば、他人にお金を貸して、
返済時期が過ぎて返してくれないのに
催促や裁判もしないまま10年以上経過したあと
相手が「時効だから返さない」と言われると
お金を返してもらう権利が消滅してしまいます。

「権利の上に眠る者は保護に値せず」という
言葉があり、権利を使わない期間が長期間になると
権利がない状態と同じになると考え消滅させる
というイメージでしょうか。

消滅時効にはいくつか要件があります。


2 「長期間」とは?~期間と起算点


「長期間」とはどれぐらいの期間でしょうか。

お金を貸したなどの一般的な債権は10年で消滅します。
ではいつ(起算点)から10年でしょうか。
これは、権利を行使できるときから、つまり貸してもらえるときからで、
返済時期を決めていたならば返済時期から
決めていなければ貸したときから10年です。

その他民法では、
家賃など定期的な支払いを目的とする債権は5年
医師、薬剤師などの診療・調剤に関する債権は3年
飲み屋などの飲食料に関する債権は1年
など、10年より短い期間のものを規定しています。
(今後、法改正で期間を統一する方針で検討されています。)

また、銀行や消費者金融などがお金を貸すなど
商行為によって生じた債権は5年で時効消滅します。

「3年」「5年」などは、権利を行使できるときからが起算点で
返済時期から、お金を支払わなければならないときから
「3年」「5年」や「10年」経過してから時効消滅です。

なお、裁判で確定した債権は、
10年より短いものも10年となります。

では、支払い時期がきても支払わなくて
「3年」「5年」や「10年」などの期間が経てば
必ず払わなくてよくなるのでしょうか?

3 時効の中断


その場合、債権者が権利を行使すれば時効は中断し、
例えあと一週間で時効が完成するところまできていても
また一度1日目に戻り、ご破算となります。

時効が中断してご破算となるのは次のケースなどです。

① 裁判上の請求
 裁判所に訴状などを提出して訴えなどを提起・申立すれば
 時効は中断しますが、却下されたり取下げたりすれば
 時効は中断しません。

 また、相手(債務者)に直接請求(催告)した場合は、
 6ヶ月以内に裁判上の請求などをしなければ
 時効は中断しません。

② 差押え、仮差押えなど

③ 承認
 これは、相手(債務者)が「借金があります」「支払う義務があります」と
 自分で債務があることを認めることです。
 また、元金や利息の一部を支払う行為は、
 債務全部があることを認めたとして、時効は中断します。


時効が中断してから、「10年」などの期間が経てば
時効が完成しますが、その間に中断すれば
またそこから「10年」などの期間の経過が必要です。

また、期間が経過して時効が完成した後でも
承認すると時効の利益を放棄したものとして、
やはり期間はご破算になってしまいます。



そして、期間が経過したあと、
権利を完全に消滅させるために必要なものがあります。


4 援用(えんよう)


時効が中断せず、「10年」などの期間が経過しても
「時効だから払いません」など、
債務者が時効により権利が消滅するという利益を受けることを
債権者に伝えなければなければなりません。
これを、時効の「援用(えんよう)」といいます。

時効の期間が経過しても、
債務者が支払いたければ支払って構いません。
しかし、支払わないならば時効を援用することを債権者に伝える必要があり、
口頭で伝えてもいいのですが、
証拠が残るように内容証明郵便で通知することが好ましいでしょう。


時効については、よく要件を確認しておかなければ
「時効が完成して支払わなくてよかったのに、
債務を認めて時効がご破算になった」
「裁判を起こさなかったので時効が完成して、権利が消滅した」
などの不利益を被ることになりかねません。


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投稿者: 司法書士 本多寿之