事務所ブログ

2013.02.22更新

事務所ブログの記事が、前回で100個目となりました。
そこで、ブログ記事のタイトルを
カテゴリ別に一覧にしたページを新設しました。

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それぞれのカテゴリに関する
ブログ記事のタイトル一覧が表示され、
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また、「司法書士 本多寿之facebookページ」の「ノート」でも
同じブログ記事の一覧を掲載しています。

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今後とも、当事務所のホームページ、事務所ブログを
よろしくお願いいたします。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2013.02.15更新

※ 前回「信託財産である不動産の売買について1」のつづきです。



3 委託者の地位の移転



委託者は誰か?といっても
委託者は信託目録に記載されています。
しかし、記載されているのはほとんどの場合
当初の委託者です。
当初の委託者は当初の受益者であることがほとんどです。

信託が設定されて以降に、受益権が転々と売買されて、
現在の受益者が当初受益者でないことはよくあります。
そして、実際は、受益権の譲渡と合わせて、
委託者の地位の移転もされていることがほとんどです。

つまり、受益権と委託者の地位は一体のものとして譲渡・移転され、
前の受益者兼委託者は、信託契約から離脱しているのです。

しかし、受益権の売買が行われるたびに
信託目録の受益者は変更されていますが、
委託者は変更されず当初の委託者のままとなっています。

理由としては、
平成18年に信託法が改正されましたが、改正前の信託法には
委託者の地位の移転について規定がありませんでした。
実際は、受益権の売買と合わせて
委託者の地位の移転がされていたにもかかわらず、
明文の規定がないということで、
信託目録の委託者は変更しない取り扱いをしていた
ということのようです。

そして、信託法の改正後も、
受益権と委託者の地位の譲渡・移転という取引が行われた際、
受益者の変更登記は行っても
委託者の変更登記は行わないことがあっていたようです。

しかし、最近、福岡法務局から
委託者の地位の移転が行われている場合は
委託者の変更登記を要する
と見解が出されたと聞きました。
(先例等は確認できていません。)

インターネットで検索してみると
委託者の変更を要するかどうかが議論になっている、
委託者の変更登記を行った、といった
司法書士のブログの記事が見られます。

不動産登記法にも次の規定があります。
(信託の変更の登記の申請)
第103条  前二条に規定するもののほか、第97条第1項各号に
  掲げる登記事項について変更があったときは、受託者は、遅滞な
  く、信託の変更の登記を申請しなければならない。

97条1項各号とは、信託目録に登記すべき事項で
委託者の氏名または名称および氏名を含みます。

委託者の地位が移転しているにもかかわらず、
変更登記がなされていない信託財産についての登記手続きは
これまでと違って、前提として委託者の変更を要する
と、なる可能性が十分にあるので注意が必要です。


4 信託条項は法の規定を排除していないか


受益者兼委託者が信託の終了を決定するとして、
しかし、ひとつ疑問が残っています。
当事者の合意による信託の終了については
前述のとおり信託法164条に規定があり
信託条項で別段の定めも可能とされています。

もし、信託条項で
「本信託契約は、期間が満了するまで原則として解除されない。
ただし、本信託契約に定めるいずれかの事由が発生した場合は
期間満了前に本信託契約は終了する」と定めてあり、
その一方で、事前の通知なしで受託者と受益者で合意できる旨も
委託者と受益者の合意により終了できる旨も定めてない場合、
それでも、信託法の規定に戻って委託者と受益者の合意で終了できるのか、
信託条項の定めが、164条1項の規定を排除しているのではないか
という疑問が残ります。

もっとも、信託条項は、委託者、受託者、受益者の3者が
合意すれば変更が可能ですから、
実際の取引において、委託者兼受益者と受託者で合意すれば
なんでもOKと考えることもできるかもしれません。
それでも、厳密には、前提として信託条項の変更登記が必要でしょう・・・


関東や関西などの大都市圏では、
オフィスビルなどの信託の登記も多いと思います。
そのような登記にめったにお目にかからない
地方都市の司法書士である私の考えは、
もしかしたら的外れではと思いながらも、
2回に渡り信託の登記について考えたことをお話ししました。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2013.02.09更新

今回のお話は、信託といっても家族信託ではなく、
信託されているオフィスビルなど大型の物件を
売買する場合のお話で、専門家向けの内容です。


1 信託財産である不動産の売買の形態


信託財産である不動産について
最終的に買主がその不動産の所有権を取得する売買は
主に次の3つの形態が考えられます。
なお、信託条項に信託が終了すると信託財産は
受益者に帰属する旨の定めがあるものとします。

① 信託の目的に従って受託者が直接売却

不動産の処分を目的とする信託において、
目的に従いその不動産を売却すれば、
その不動産は信託財産ではなくなり、
買主はその不動産の所有権を取得することになります。



② 信託終了→受益者が売却

信託を終了させると、信託財産である不動産は受益者に帰属します。
(信託条項に定めがある場合)
受益者が不動産の所有者兼売主となり、
買主に対し売却します。



③ 受益権の売買→信託終了で所有権を取得

まず、受益権を受益者と買主の間で売買し、
買主が受益者となったところで信託を終了させれば
信託財産は受益者となった買主に帰属します。



①の形態は、収益物件の管理を目的とする信託が多いこと、
また、受託者である信託銀行などが
売主として瑕疵担保責任にを負うことになることなどから
あまり多くないと思われます。
また②の形態では、一旦受益者が所有権を取得することで、
受益者に登録免許税、不動産取得税の負担が生じます。
(不動産取得税の課税は受益者が当初委託者でない場合)

というわけで、実際はほとんど③の形態で売買が行われているようです。


2 合意による信託の終了


③の形態では、まず受益者と買主との間で受益権の売買を行い、
合意により信託を終了させて、買主に不動産を帰属させます。
通常はこれらを同日で行ってしまいます。

それでは、受益権の売買が行われた後、
どうやって、信託を終了させるのでしょうか。

信託の終了について、例えば
「受益者が受託者に対し、60日前に書面により通知することにより
いつでも自由に信託契約を解除することができる」
といった定めが信託条項にあることが多いようです。

しかし、③の形態では、買主は受益者となったその日に
信託を終了させるわけですから、
事前に受託者に通知して解除することはできません。

実際の取引では、受託者と受益者が
信託の合意解除の書面を取り交わしているようです。

しかし、合意による信託終了について、信託法は次のように定めています。
(委託者及び受益者の合意等による信託の終了)
第164条
 委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。
2  (略)
3  前二項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるとき
 は、その定めるところによる。
4  (略)
※ 信託の終了に遡及効がないため、
法では「解除」ではなく「終了」と規定しています。

信託条項の別段の定めで終了できないとなると
合意で終了させることになりますが、合意は
「委託者」と受益者で行うのであり、
「受託者」と受益者で行うのではありません。

では、「委託者」はいったい誰なんでしょう?

つづきは、次回
「信託財産である不動産の売買について2」へ。

投稿者: 司法書士 本多寿之

2013.02.02更新

1 「贈与」が注目されているようですが・・・


1月22日に、2013年度税制改正をめぐって
自民・公民・民主の3党が富裕層への
所得税・相続税の増税案について合意したと報道されました。

相続税については、基礎控除を現在の
5000万円+(1000万円✕法定相続人の数)から
3000万円+( 600万円✕法手相続人の数)となる見通しです。

民主党政権でも同様の改正の動きはありましたので、
1、2年前から、生前に贈与税の控除枠を利用し、
相続財産を減らして相続対策を、といった内容を
雑誌やインターネットなどでも見かけます。
「贈与」が注目されているようです。

財産をもっている人が高齢でも
判断能力が衰えていなければ
本人の意思で贈与はもちろん可能です。


2 後見人がいても単なる贈与は難しい


しかし、本人の判断能力が衰え、
親族に財産を贈与することが理解できない状態では、
贈与はできません。


贈与はあくまで契約です。
あげる方(贈与者)と、もらう方(受贈者)の意思が合致して
初めて贈与は成立します。
いくら、将来、相続税を負担するであろう親族が望んでも、
贈与する本人に贈与する意思がない
判断能力が衰え贈与する意思を持つことができないのであれば
贈与はできないことになります。

判断能力が衰えているのであれば、
成年後見人を選任したらどうか、と考えるかもしれません。

確かに、成年後見人は判断能力の衰えた本人の法定代理人として
本人の財産を管理・処分する権限を持っています。
しかし、財産の管理・処分はあくまで本人の利益のために行うのであり、
単に他人の利益のために行うのではありません。

親族に対してと言えども、本人の財産を単に贈与する行為は、
成年後見人が選任されてもできないと考えられます。
これを認めると、誰のための成年後見制度かわからなくなります。

成年後見人は裁判所あるいは後見監督人の監督下におかれます。
本人の財産を単に減らすような行為をすると
ひどい場合、後見人を解任される、
あるいは損害賠償請求される恐れすらあります。
「相続税対策」であっても、それは本人のためではなく
あくまで、相続人となる親族のためだからです。

では、本人の判断能力が衰えた後に親族が思い立って
財産を贈与する方法はあるでしょうか。
答えはNOです。少なくとも私には思いあたる方法はありません。

だとするならば、判断能力あるうちに贈与するしかありません。
しかし、今は判断能力があっても、
「将来、長男が家を建てたならば住宅取得資金を贈与したい。」と
考えた場合、長男が家を建てるときに判断能力が衰えていれば、
住宅資金の贈与はできなことになります。

そこで、判断能力のあるうちにできる手当として
任意後見契約を締結し、
契約で任意後見人に贈与する権限を与えておくことが考えられます。
また、家族信託の活用も考えられます。
(ブログ「将来、長男に住宅資金を贈与したいが・・・」をご覧ください。)
いずれも無制限に贈与を行うことは
本人の財産を危うくします。
目的、金額などを明確にする必要があるでしょう。


「父は認知症でわからないけど、
贈与で私に土地の名義変更をして欲しい」と言われても
私たちは、「できません」とお答えするしかありません。
判断能力のあるうちに、何らか手当が必要です。

投稿者: 司法書士 本多寿之