一度作成した遺言の一部または全部を変更したい
あるいは、一部または全部をとりやめたいとき、
いずれも、もう一度、別の遺言を作成して、
その遺言で変更したりとりやめたりしなければなりません

自筆証書遺言であれば、燃やすなどして
遺言書を破棄する方法でとりやめることもできます。

とりやめることを民法では「撤回」と呼んでいますが、
変更する場合も、変更する部分については
前の遺言が「撤回」されたことになりますので考え方は同じです。

1 遺言による一部または全部の撤回

遺言の一部または全部の撤回をするときは、
新たに前の遺言を撤回する旨の遺言を作成します。

遺言の方式は自筆証書遺言でも公正証書遺言
(あるいは秘密証書遺言)でも構いません。
例えば、前の遺言が公正証書遺言であっても
自筆証書遺言で撤回することができます。

「○年○月○日に作成した遺言は全部取り消す。」
「○年○月○日に作成した遺言のうち、
弟○○に1000万円遺贈するとした部分を
弟○○に500万円遺贈すると変更する」など、
表現方法は自由ですが、
誰が読んでも分かるよう明確に書く必要があります。

2 前の遺言と異なる内容の遺言を作成した場合

最初に「自宅不動産○○は長男Aに相続させる」と遺言を作成し、
後日、「自宅不動産○○は長女Bに相続させる」と
前の遺言と相反する遺言を作った場合はどうなるでしょうか。
「前の遺言を変更する・取り消す」といった言葉が入っていなくても
前の遺言と相反する部分は、
後の遺言で撤回されたものとみなされます。

しかし「長男Aに1000万円相続させる」と遺言し、
後日、「長女Bに1000万円相続させる」と遺言した場合、
AB両方が1000万円ずつを相続することは可能で、
二つの遺言は相反しているとは言えませんので、
最初の遺言は撤回されたことになりません。
長女Bだけに1000万円相続して欲しいのであれば
「前の遺言を変更する・取り消す」などの言葉を入れて、
前の遺言を撤回することを明確にする必要があります。

3 遺言の破棄・目的物の破棄

もっとも、全部を撤回して取り消したいのであれば、
自筆証書遺言ならば破り捨てるか燃やすなどして
破棄してしまう方法もあります。

一方、公正証書遺言は、手元にある遺言書を燃やしても、
公証人役場に原本が残っていますので撤回したことにはなりません。

また、目的物を破棄してしまうと
もはや遺言の内容は実現しませんので、
遺言の撤回と同じになります。

最初に作った遺言の一部または全部を撤回するために
新たに遺言を作成する場合も、
遺言の作成に変わりはありませんので、
ブログ「遺言は自筆?公正証書?どちらがいい?」でお話ししたように、
公正証書で作成されることをお勧めします。

そして、自筆証書遺言で作成される場合は
専門家に相談されることをお勧めします。

角田・本多司法書士合同事務所