両親が住んでいた父名義の家を、息子夫婦が一緒に住むために
息子がローンを利用して増築をする。
めずらしい話ではありません。

ところで父名義だった家は増築後に
父の息子の共有名義になるのでしょうか?

増築部分は元の家にくっつきますが、これを付合といい、
民法242条「不動産の所有者は、その不動産に
従として付合した物の所有権を取得する。」
つまり、元の家の所有者である父は、増築部分の所有権も取得する、
その結果、増築後の全体が父の単独所有になります。

家の価値は600万円+900万円=1500万円に上がります。
これでは、父は得する(息子は損する)ばかりですから、
「損害を受けた者は・・償金を請求することができる」とも規定されています。
息子は父に900万円請求できるわけですが、
実際はそんなお金のやり取りはされないでしょう。

しかし、父は900万円得したままだと
息子から父に900万円の贈与があったとみなされ、
父に贈与税が課税されます。

(贈与税は基礎控除は1年間で110万円です。
ブログ「相続税、贈与税、かかる?」をご覧ください。)

そこで、父は900万円を息子に支払う代わりに、
家の所有名義を一部息子に移し共有にすれば
贈与税はかかりません。

どれだか移すかは、息子は900万円支出してますから
900万円/(600万円+900万円)=3/5
増築後に5分の3を息子に移せばお互い損得なしになります。

損得なしをもう少し詳しく考えると・・・
父は自分の家600万円の3/5=360万円を息子に譲渡し
息子は900万円の内、2/5=360万円を
父のために支出したことになります。

これで贈与税はかかりませんが、
父には360万円の譲渡所得があったとして
譲渡所得税の課税対象となります。

また、息子が住宅ローン控除を受けるためには
「自己が所有」している家屋を増築することが要件の一つです。
増築前、家は父の単独所有のため
上の例では控除は受けられないことになります。
この要件を満たすには、増築前に息子が一部贈与を受けるなどして、
息子に持分を持たせることが必要です。
ただし、持分が多いと息子に贈与税がかかります。

※具体的な税額の計算、税金の納付は
税務署や税理士にご確認ください。

角田・本多司法書士合同事務所