事務所ブログ

2012.08.28更新

前々回からの、子どものいない夫婦について、
先祖代々の家と土地を、
妻→弟の長男と引き継がせるために
信託を利用することが考えられます。
今回は信託のしくみについて、
一つの例で説明してみたいと思います。

1 信託のしくみ


信託とは、委託者が自分の財産を受託者に移して
受託者が受益者のために、決められた目的したがって
財産の管理・運用・処分などを行うというものです。


信託は、次の方法で設定されます。
①委託者と受託者の契約
②委託者の遺言
③公正証書など書面での意思表示(委託者=受託者の場合)


2 契約による信託


わかりやすい例として、
契約で信託を設定した場合で説明します。

高齢となったある人(父)が、自分の所有する賃貸アパートを
自分の長男に管理してもらうために
自分を委託者、長男を受託者、
アパートを信託財産、
目的をアパートの管理として
長男と契約で信託を設定したとします。

また、アパートの家賃収入を自分の生活費にあてたいので、
自分を受益者にしたとします。


信託により、アパートの所有権は長男、つまり受託者に移ります。
その後、アパートの入居者と賃貸借契約を結ぶ、
アパートの修繕を業者に依頼する、
家賃の振り込まれる銀行口座から出金するといった
アパートの管理に必要な行為を
長男は
自分の名前で行うことができます。
アパートの所有者なので当然です。

しかし、信託の目的はあくまでアパートの管理ですので、
長男は所有者だからと言って、
アパートを勝手に売却することはできません。

長男はアパートを管理して、
受け取った家賃から、かかった費用を引くなど
信託契約での取り決めに従って、
受益者でもある父に配当をします。

もし、父が認知症などで判断能力が衰えても、
アパートの所有者は長男ですので、
長男は引き続き、アパートの管理に必要な賃貸借契約、
修繕を依頼する契約などを行うことができます。

もし、信託の目的を
委託者が所有していた不動産の売却としていたのならば、
長男が不動産の所有者ですので、
父の判断能力が衰えても、
不動産の売買契約を有効に行うことができます。


3 受益者、財産の引き継ぎ先の指定


そして、信託の大きな特色は、
受益者が死亡したときに、
別の者が受益者となることを指定することができる点です。


最初の例で、父が死亡したときは、
母が受益者となると信託契約に定めておけば、
父の死亡後は、母が受益者として配当を受けることができます。


また、母が死亡したときは、
信託は終了して、残ったアパート(残余財産)は、
長男が取得すると信託契約に定めておけば、
父、母の死亡後、アパートは完全に長男の所有となります。
つまり、信託終了後に、財産を引き継ぐ者を指定することができるのです。

通常の遺言では、
自分(父)が死亡した後に発生した相続(母の死亡)について
財産の引き継ぎを指定できなかったことと大きく異なる点です。


さて、次回は、子どものいない夫婦について、
先祖代々の家と土地を
妻→弟の長男と引き継がせるための
信託の利用についてお話しします。


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投稿者: 司法書士 本多寿之