前回、子供がいない夫婦で
夫が自分の財産を妻に相続させたいときは、
遺言を残すことが重要だとお話ししました。

では、遺言で妻が夫の財産を相続した後、
妻が死亡したとき、
その財産はどうなるのでしょうか。

妻の親、祖父母・・・の直系尊属も先に死亡している場合は、
妻の兄弟姉妹が相続人になります。
つまり、夫の遺産のうち、妻が死亡した時点で残っているものは、
妻の兄弟姉妹に相続権があることになります。

もし、夫が先祖代々の家と土地を引き継いでいて、
自分が死亡したら妻に住まわせておきたいと
妻が相続するように遺言を残した場合、
夫の死亡後、妻名義となった先祖代々の家と土地について
妻の死亡後は、妻の兄弟姉妹に相続権があり、
夫の兄弟姉妹には相続権がありません!!
先祖代々の家と土地が他の家のものになるのです。

「家」を中心とするのは戦前の考え方で、
時代錯誤ともとられるかもしれませんが、
先祖代々の家土地を、〇〇家の子孫に
引き継いでもらいたいと考えたとしても、
おかしな話ではないと思います。

夫が、残された妻には安心して住んでもらいたいから、
家土地は妻に相続してほしい、
しかし、妻の死後は、地元にいて親しくしている自分の弟の長男に
引き継いで欲しいと考えたとき、どうすればいいでしょうか?

夫が遺言で、自分が死亡した後、妻が引き継いだ遺産について、
さらに妻が死亡後に引き継ぐ者を指定することは
できないと考えられています。

1つの方法は、妻に「自分が死んだら家土地は
夫の弟の長男に遺贈する」と遺言を書いてもらうことです。
(相続権のない人に、遺言で
遺産を引き継がせることを「遺贈」と言います。)

しかし、遺言は1度書いても、
後から新たな遺言でその内容を変更することができます。
夫の死後、妻の気が変わって遺言を書き換えたら
夫の意志は実現しません。
妻が生きている間に売却することも可能です。
夫の意志の実現は、残された妻次第ということになります。

先祖代々の家と土地を妻→弟の長男と
確実に引き継がせる方法はないのでしょうか?
これについては、次回以降にお話しします。

角田・本多司法書士合同事務所