前回と関連して賃貸借と供託のお話です。

前々回、借家人が死亡した場合、
借家権は借家人の相続人に承継されるとお話ししました。

それでは、家主が死亡した場合はどうなるでしょうか。
家主=借家の所有者ですが、借家の所有権は、
死亡した家主の相続人に承継されます。
そうすると、家主の地位も相続人に承継され、
賃貸借契約はそのまま続くことになります。

すぐに相続後の新しい家主(所有者)がわかれば、
その人に家賃を払えばいいのですが、
家主の相続人が誰か、全くわからないということもあり得ます。
わからなければ家賃を払えないから、
払わなくていいのでしょうか?

前回、家主が家賃の受け取りを拒否した場合、
そのままだと家賃不払いになる(契約解除の理由になる)恐れがあり、
そのようなときの手当として
「供託」手続きがあるとお話ししました。

家主の相続人が全くわからないときも同じで、
そのまま払わなければ家賃不払いになる恐れがあります。
そのときも家賃を「供託」することで、
家賃不払いを避けることができます。

家賃の支払い、借金の返済などの債務の履行を弁済といい、
その供託を弁済供託といいます。
弁済供託をするには理由(供託原因)が必要です。
民法494条に規定があり次の3つのいずれかに該当する必要があります。
1受領拒否・・・例)大家が家賃の受け取りを拒んだ
 ※家賃を支払おうとすることが前提です。ただし、あらかじめ
  受け取らないことが明確な場合は、いきなり供託できることがあります。
                          (不受領意思明確)
2受領不能・・・例)大家が行方不明
3債権者不確知・・・例)大家の相続人がわからない

これらに該当しなければ弁済供託はできません。
また、支払期日に遅れて供託する場合は、
遅延損害金を付して供託しなければなりません。
「家賃は月5万円だけど、今月はお金がないから3万円供託」はできません。
契約通りの金額(本旨弁済)でなければ供託できません。
先払いの特約がない限り、
例えば6ヵ月先の家賃まで供託ということもできません。
毎月、期日までに家賃全額を持って行って、拒絶されたら供託・・・
と、これを繰り返さなければなりません。

しかし、受け取らないから、相続人がわからないからと、
供託もせずに放っておくと、後から契約解除の理由となりかねません。
少し面倒ですが、毎月供託するしかありません。

供託には、弁済供託のほかに、
宅建主任者などが行う営業保証供託、
裁判所の手続きで命じられる担保供託、
給料差し押さえで、給料を支払う雇用主が行う執行供託などがあります。

司法書士は、供託手続きについて代理人として
供託したい人に代わって手続きを行うことができます。

借金を期日に返そうとしたら、貸主が行方不明、
そのまま放っておくと、毎日、遅延利息が増えていってしまいます。
供託すれば借金を返済したことと同じですので、遅延利息は発生しません。

ですから、放っておかずに司法書士へご相談ください。

角田・本多司法書士合同事務所