前回の続きです。
私道の通行権を確保するにはどうすればよいでしょうか。
(※ 通行できるかという問題と、家を新築・建て替えできるかという
建築基準法の問題は別問題です。通行できても、
新築・建て替えができないこともあります。)

1 囲繞地(いにょうち)通行権の主張(民法210条~213条)
公道に通じていない土地の所有者は
周りの土地を通行する囲繞地通行権が認められます。

しかし、この通行権は
「他の土地のために損害が最も少ない」ところを通る
しかも幅どれくらいまで許されるかはケースバイケースという
確定するまで不安定な通行権です。
話し合いで確定できなければ裁判をせざるを得ず、
登記簿に権利として登記されないので、
銀行などが納得する明確な通行権にはなりにくいのです。

2 道路を共有にする
これは分譲地などでときどき見かけます。
前回の例でみれば私道をすべてABCDEFの共有にするのです。
(AFは公道から家への出入りができるのなら、
BCDEの共有も考えられます)
お互いに持分を交換し合って共有にすればよいでしょう。
つまり、全員が協力し合う必要があります。

ところで、例えば土地をABCDEFの6分の1ずつ共有にするというと、
「私の分は何㎡ですか」「どこからどこまで使っていいですか」と
聞かれることがあります。
しかし、共有するのは所有権という権利であり、
権利の対象は土地全体です。
ですから、ABCDEFはそれぞれ土地全体を使える
(道路なら通られる)ことになります。
割合が多い人がたくさん通られるということもなく、
3分の1の人も100分の1の人も同じように通られます。

3 通行地役権を設定する
通行する必要のある土地に、
通行を目的とした地役権を設定してもらうことも考えられます。
道路の所有者が、所有名義は一部でもあげたくない、
でも、通るだけだったらいいですよという場合などです。
地役権は登記できますので、お互い所有者が代わっても、
地役権はそのまま、つまり通行権は消えません。
もちろん道路所有者の手続への協力が不可欠です。
また、有償、つまり通行料の支払いが必要となることがあります。

4 賃借権・使用借権
お金を払って道路を借りる(賃借権)、ただで借りる(使用借権)方法です。
ただし,登記しなければ売買などで所有者が代わると通行権は主張できず、
そもそも使用借権は登記ができません。
不安定な通行権とならざるを得ません。

ご近所と顔見知りの間は問題は生じないかもしれません。
しかし、子、孫の代になったり、
売買で外から第三者が入ってくると、トラブルになりかねません。
また、安くしか売却できないなど、財産価値にも影響します。

道路自体には価値はないかもしれませんが、
通行できるかどうかは、日常の生活や
財産価値に大きな影響を及ぼしかねません。

顔見知りで仲がいいうちに、
協力して何らか手当しておくことが、
子や孫のためになると思います。

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