くどいようですが、
相続があった都度、遺産分割をして
不動産の名義変更をすることが大切だとお話ししてきました。

しかし、相続登記をしないまま数十年が経過して、
現在、相続人が数十人!
分割協議をしようにも、印鑑をもらおうにも、
気が遠くなる・・・こういった話は現実にあります。

私も過去に、相続人が八十数名という件の相談を受けたことがあります。
父親から相続したと思っていた土地が、
父親のおじの名義になっていました。
そのおじには子供がなく、しかも他の家に養子に入っていたため、
父親を含む兄弟と、養子先の義理の兄弟が相続人に、
その後、その兄弟たちは死亡してしまい、
その子供たちに相続権が移っていました。
(特定を避けるため、実際の事案と内容を変えてます。)

父親が死亡して20年以上たってそれに気付きましたが、
すでに数十人の相続人がおり、
どうしようもないまま、その人も死亡して、
さらにその人相続人からの相談でした。

遺産分割することは事実上不可能に近い。
しかし、自分の父親から相続したと思って
その家と土地に住み続けていたことから、
時効取得の可能性があると考えました。

時効取得とは、民法の規定により、
20年間、他人の物を、所有の意思をもって、
平穏かつ公然に占有した者は、
その所有権を取得するというものです。

(ただし、相続人の1人が、その遺産全体を時効取得するには、
自分が単独で相続したと疑わず、
その後その使用収益を独占し、他の相続人から異議もなかった
などの要件が必要です。最判S47.9.8)

ちなみに、「所有の意思」ですから、
たとえば、借家人が借家に20年住み続けても、
借家人のものにはなりません。
借家人はあくまで、「借りている」のであって、
「所有している」とは言えないからです。

もっとも時効の要件をみたしていたとしても、
自動的に名義が変更されるわけではありません。
印鑑をもらうことも事実上不可能ならば、
裁判手続きによるしかありません。

時効でその不動産を取得したことを理由に、
自分に名義変更(所有権移転)登記手続きをするよう
他の相続人に求める民事訴訟を提起します。

もちろん裁判ですから、結果が100%保証される訳ではありませんが、
私が相談を受けたケースは、
裁判所からこちらの主張を認める判決をもらい、
依頼者が単独で名義変更(所有権移転)登記を行いました。

時効の要件にあてはまるかどうかは、
それぞれの事案によりますし、
裁判の結果は、裁判してみなければわかりません。
しかし、数十年間、父親の代から住み続けている家について、
名義変更がされていない、相続人が多すぎて印鑑がもらえないとき、
時効取得が解決の糸口になるかもしれません。

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相続、遺言、不動産登記、名義変更は、
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